夢を見たよ(切?/甘)








床の中で、私は小さく息を吐いた
嫌な夢を見た

もう一度寝直そうにも
その嫌な夢を
再び見てしまうのではないかと思うと
どうにも寝る気になれなかった

かと言って起き上がってしまえば
隣で眠る三成を起こしてしまう

私はただいたずらに時を過ごしていた


「…起きているか」

しばらくすると、隣から
遠慮がちな声が掛かった

「起きているよ」

どうしたんだい?
顔を見てそう聞いてみれば
三成は目を伏せて、
嫌な夢を見た、と言った

三成の少し長い睫毛が
目元に影を落として
なんだか儚く見えた

「そうかい。でもそれは夢だ」

もう一度お休みよ、
三成は布団を掛け直してやろうとした
私を制して、私の額に自身の額を
くっつけてきた


「姫…どこかへ行くようなことがあれば、その両の脚を切り落としてやる」

そう言って、私の大腿を
三成の血色の悪い白い手が
いとおしそうにするりと撫でた

「そんなことしたらあんたの傍に立っていられないよ」

私も真似して
三成の大腿をするりと撫でた


「私以外に触れる手など、腕から引き千切ってやる」

そう言って
私の左手を持ち上げて、
甲に三成の薄い唇があてられた

「腕がなけりゃあんた抱くことが出来ないだろうよ」

私も真似して
三成の左手を持ち上げて、甲に唇をあてた


「私以外に愛を紡ぐ口など縫ってやる」

そう言って
今度は私の唇に
三成のそれが重なった

「口がきけなきゃ、あんたにも好きだと言えないよ」

私も真似して
三成の唇に自分のそれを重ねた


「離れるな、傍にいろ、私を置いていくな」

そう言って
三成は私を掻き抱いた

「あんたこそ」

私も真似して
三成を抱き締め返した


「…このままお休みよ」

「ああ…」

トン、トン、と調子をつけて
背中を優しく叩いてやると
しばらくして寝息が聞こえた


そして、私だけ、静かに泣いた



君が消える夢を見たよ




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