焼け野原に二人(微糖)








「姫、卿が死んだら頭蓋を茶釜にでもしてやろう」

松永はニヤリと笑った

あんたが茶釜にしたかったのは
かつての主、
織田の殿様だったんじゃないのか
そう問えば、松永は
はて何のことやら、と首を傾げた


「そう言う訳だ。死ぬときはくれぐれも頭蓋を守ってくれたまえよ。ひび割れてしまっては使い物にならないからね」

くつくつと笑いながら話す松永は
どこか優しかった


「なら、あんたが死んだらあんたの頭蓋に火薬を詰めて、それを抱き抱えて爆死して、あんたの後を追っかけてやるよ」

素敵な演出だろう?

こちらもニヤリと
笑いながら言ってやれば、
松永は呵呵と笑った


「卿はなかなか粋なことを言う」

「あんたほどじゃあないさ」

私もつられて笑った


「しかし…」

ひとしきり笑った松永は
辺りを見回し肩をすくめた


「こうも何もないと、新たな茶釜を手に入れるまで時間がかかりそうだな」


確かに、松永の言う通り
辺りは一面何もない
先程まで戦をしていただなんて
到底思えないほど
何一つ、何一つなかった
勿論死体すらない
全て、灰になった
松永が、灰にした


「自業自得だろうよ」

「それもそうだな」


松永は残念だと呟きながら
するりと自慢の刀の刃を撫でた


「…そんなに新しい茶釜が欲しいなら、今ここで差し出してやろうか?」


私はその刀をぐいと掴み
自身の喉元に誘導した
僅かに触れた切っ先は
私の薄い肌を裂き
そこから朱が滲んだ

すると松永は一瞬だけ
本当に一瞬だけ眉を寄せた


「何、案ずることはない。そこまでして急ぎで欲しいわけではないからね」


そしてパッと私の手を振りほどき
刀を鞘に納めた

その様子があまりにもおかしくて
私は大声を出して笑った
そうしたら今度は
寛大に眉を寄せられた


「私ってば、愛されてるねぇ」

「卿の錯覚ではないかね?私は愛してなどいないよ」

「はいはい、分かってますよ」


私がまた笑い出すと
松永もやれやれと笑いだした



焼け野原に二人




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