If I were to reborn...(切?/甘)








静かな一日だった

いつもは三成が
家康だの残滅だのと
大声で叫んでいるが
今日はびっくりするほど静かだった

それもそのはず
今日は朝から
刑部の体調が良くないのだ

私は昼間、執務の合間に
何度か刑部の部屋を訪ねた
刑部は大丈夫だと言いつつも
やはり辛いのか
布団から起き上がることはなかった


日は既に傾き始め、
葉が落ちて裸になった山の向に
沈みかけていた

夕食の前にもう一度
様子を見に行こうと
廊下を歩いていたら
布団にいるはずの人が
縁側に腰をかけていた


「ちょっと刑部!」


私は慌てて駆け寄った


「どうした、姫よ」

「どうした、じゃないでしょ!?」


寒くなってきているのに
上着も羽織らないで
外に出るなんて
しかも具合が良くないのに
一体どういうことか
と早口にまくし立てれば
刑部は急に耳が遠くなったと
聞こえぬフリをした


「もう…それで?何で外に出てきたの?」

「星を見ていた」


そう言って空を指差した刑部は
縁側から動く気は皆無の様だ
私は肩にかけていた羽織を脱ぎ
彼の肩にかけた


「ヒヒッ…すまぬなぁ姫」

「ほんとだよ、まったく…三成に怒鳴られても知らないからね?」

「そういえば、本日の凶王三成は静かであったな」


そりゃあ刑部が寝てるから
さすがの凶王様も
気を使ったんでしょうよ
そう返せば、刑部は
またあの引き笑いをしながら
さようか、と返事をした


それから暫くは
今日はどういうことがあっただの
最近面白かった書物だの
とりとめもない話をした


どのくらいそうしていただろう
日は完全に落ち
辺りは暗くなっていた

私はふと
読み終えたばかりの
本のことを思い出した


「ねぇ刑部」

「なんだ」

「刑部はさ、輪廻転生って信じる?」

「輪廻転生、とな?」


─…輪廻転生
人の魂は何度も何度も
生まれ変わる、という考えだ

私自身、それを信じている
という訳ではないが、
その考え方は嫌いじゃなかった


「私ね、もしも輪廻転生ってのが実際にあることだとしたら、次に生まれ変わる時は星がいいな」


私は空を指差した


「ほう…何故だ?」


刑部は意地悪そうに目を細め
理由を求めた
その顔をする時は大抵
私の考えがバレている時だ


「何でだろうね」


それでも私は白を切った

あなたを照らす星になりたいから
なんて、恥ずかしくて
言える訳がなかった


「刑部は?もしも生まれ変わるとしたら何になりたい?」

「我か?我は…」


空では星が瞬き始めた


「もしも生まれ変わるのならば、次は、ぬしと共に野を駆け、刀を振るい、笑い合い、愛とやらを語らい合える体に生まれたいものよ」

「…何だか恥ずかしい奴だな」

「ヒヒッ、ぬしも“我を照らす為の星になりたい”なぞ言いよって、恥ずかしい奴よな」


ほら、やっぱりバレてた


流れ星がきらり、と光り
どこかに堕ちていった



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