君の隣に僕はいない
(切/無糖/嫉妬?/歪?)
※一ノ瀬視点
トキヤ→ヒロイン→←音也
もっとはやく
君を知っていれば
私は、君の一番に
なれただろうか
最近、音也と姫が付き合っているのではないかと噂がたった
そして、あのバカはそれを肯定した
早乙女さんに逆らうという勇気は、呆れや哀れみを通り越して、最早賞賛にあたいします
あの能天気バカと姫…
正直、釣り合わないと思います
彼女はAクラスの作曲家コースですが、あのセンスはSクラスの作曲家をも凌ぐでしょう
彼女の曲は素晴らしい
音也のパートナーと聞いたときは衝撃を受けました
私が姫と親しくなったのは
姫のパートナーであり、寮で同室でもある音也の紹介があったから、ですかね
最初はあまり話さない方かと思いましたが、楽器や声楽の話をしたら、つい意気投合してしまい
今ではお互いに名前で呼び合う程です
そんな彼女が、あの音也と…
考えるだけで黒い何かが体の中でとぐろを巻いているかのような感覚が沸き上がり、とても不快です
音也とは同室ですから
嫌でも顔をあわせなくてはならない
あの噂─いや事実ですか
それを聞いてからというもの
音也の顔を見るだけでどうしようもなく苛つきます
((何故、あなたが姫と…?))
そう思わずにはいられないのです
***
先程、音也から
『今夜は遅くなりそうだから先に寝てて!』
とメールが来ました
大方、姫と作曲でもしているのでしょう
本当に、何故音也なのでしょうか…
明日も早いですし、私は横になり眠りに落ちるまで読書をしようと、読み掛けの本を手にとった
同時に、ふと思った
こうしている間にも
姫は私ではない誰かと
同じ時間を過ごしている
私ではない、誰かと…
姫と繋がっている人間は
皆いなくなればいい
姫がひとりになればいい
そうすれば私は、私達は、
誰のことを気にすることもなく
ずっと二人きりで
ずっと話していられるのに
ずっと傍に、
同じ時間を過ごせるのに…
「…我ながら下らない事を……きっと疲れているのでしょうね」
私は手にとった本を元の場所に置き、ベッドに深く入った
自分に嫌気がさした
彼女が望んだことならば
自分には関係のないことなのに自分がどれだけ
彼女を想っていようと
その想いは
彼女を不幸にしかしないのに
「…全く、人間とは汚い生き物ですね」
─今のことは忘れよう
今、この瞬間
彼女の隣にいて
同じ時間を過ごしているのは
音也であって
私ではないのだから…
私は目を閉じた
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