おもちゃのゆびわ (甘)


※姫視点






私の手には二つの指輪
一つは左手の薬指に
もう一つは右手の小指に

あれは、私も彼も
まだ小さかった頃


***


私の家も
そこそこ名の知れた財閥で
よく財閥同士が集まるパーティーに参加していた

そこには子供なんて
ほとんど来ていなかったけれど
神宮寺財閥のところの子供は来ていた

神宮寺財閥の三男のレンくんとは
わりと歳も近かったから
パーティーで会うたびにお話をして、退屈なパーティーの暇つぶしをしていた

学校の子達とは違う
自分に近いトモダチだった


その日も退屈なパーティーに
うんざりしていて
またレンくんと話をしていた


いつもと同じ
とりとめのない、下らない話

するとレンくんは唐突に
ポケットの中を
がさごそとまさぐり
おもちゃの指輪を取り出し
私に差し出した


「姫、これあげる!」

「なぁに、これ」

「ゆびわ!大きくなったらけっこんしよう!」

「え…?」

「オレ、姫のことが好きなんだ、だから、ね?」

「うーん…?」

「…姫はオレのこと好き?」

「好き!」

「じゃあきまり!」


受け取った
おもちゃの指輪
右手の薬指につけてもらった
おもちゃの指輪
大事に大事にしまっておいた
おもちゃの指輪


***


あの頃よりも大きくなった手
再び右手の薬指につけるには
おもちゃの指輪は小さくて
だからギリギリはいる
右手の小指につけた

左手でおもちゃの指輪に触れる


「姫、準備はできたかい?」

「レン…」


ガチャリと開いたドアから入ってきたのは白いタキシードを着た幼幼かった彼
おもちゃの指輪の送り主


「ウェディングドレス姿の姫は最高に素敵だね」

「そう?ありがとう」

「ところで、ぼーっとしていた様だけど、どうしたんだい?」


優雅な動きで私の元へやって来たレンは
私の右手の小指についている
おもちゃの指輪に気が付いた


「これはまた…随分懐かしいものをつけてるね」

懐かしそうに目を細めるレン
幼かった頃の面影がちらついた

「大事にしまっておいたの」

「俺はあの時から、ずっと姫だけを愛していたよ」

「…恥ずかしいこと言わないでよ」

「おもちゃの指輪もいいけれど、俺としてはこっちの指輪を気にしてほしいな」

左手の薬指に視線を移し
そこにそっと口付けられる


「愛してるよ姫」

「私も」




あなたがくれた
おもちゃの指輪には
たくさんの本当が詰まってた







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