一瞬の流れ星(シリアス?/死)
数日前のこと
夜遅くのラジオ番組で共演した
私と姫は同じ車で
事務所の寮へ戻ることになった
あの時のことを
今になって後悔しています
***
「流れ星は一等星より美しいと思わない?」
窓の外に向けられていた瞳が
こちらを向いた
私が短く相槌を打つと、彼女は
それは何故かわかるか、と聞いてきた
「どうしてですか?」
「ほんの一瞬であっても宇宙全体を自分ひとりの舞台に変えてしまうから。永遠の命を約束された星達を脇役にキャスティングしてしまうくらい自分を輝かせるからだよ」
「そんな風に考えたことはありませんでした」
「だから私は流れ星みたいになりたいの」
そう言って笑った姫は
いつもの姫とは
違って見えた気がした
会話はそこで終わった
***
あの時、もしも私が
会話を終わらせずに
どういう意味か聞いていれば、と
思わずにはいられません
数日前から一日に一回は
必ずテレビで目にする
『アイドル・姫、若すぎる死』
という字幕
そう、姫は死んだのです
一緒に帰ったその日の夜に
死因は失血死
風呂場で頸動脈を切って
倒れていた所を
マネージャーが発見したらしく
近くには遺書もあったそうです
要するに自殺でした
『あの人気アイドルが何故』
『何が彼女を自殺に追い込んだのか』
誰もが口を揃えてそう言いました
音也もレンも皆驚いていました
売れっ子アイドルとして
名を馳せていた姫でしたが
スキャンダルがあった訳でもないですし
トラブルがあった訳でもない
はっきりとした自殺の動機は
なかった様に思ういます
ただ、強いて上げるとすれば
彼女はきっとこう言うでしょう
“一瞬の流れ星になりたかった”
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