わかれ道の先 (切)








ただいま、という声と共に
私の部屋へ現れた真斗
私の座っていたソファーの横に
鞄を置いて自身も座わった

ソファーが軋む

真斗は鞄から主役を務めるドラマの台本を取り出して
真剣な顔をして読み始めた

沈黙が続く

私は前々から準備していた言葉をついに口にした


「ねぇ真斗、別れよっか」


この言葉を切り出すのに
もう躊躇いはなかった

私と真斗は早乙女学園で
良きライバルとして過ごして、
二人とも見事に
卒業オーディションも合格
それからは学園長、
もとい社長の推薦もあり
二人でユニットとして
活動してきた

ユニット活動を通して
互いに惹かれあっていった
私達は付き合うことにした

でも、それも今日で終わり


「っ…何故?」


真斗の綺麗な顔が歪んでいる
全く分からない、そんな表情に
困惑の色がプラスされていて
見ている私もほんの少しだけ
胸が傷んだ


「私達は別々に歩きすぎたんだよ」

「何の、ことだ?」


真斗は相当困惑しているのだろう
声が震えて、掠れていた


「お互いの刺激になるようにって最初に決めたから、仕事も私生活も口出ししなかったけどさ、もう無理なんだよ」

「だから、一体何が…」

「干渉しなかったから、別々に歩きすぎたから、真斗のことがわからなくなったの」


実際にそうだった
付き合い始めた頃に決めた
互いのことに口出ししない
というものが、結果的には
愛情を薄れさせた


「だからさ、ここでお別れにしよう。お荷物にはなりたくないし」

「俺は姫をお荷物だなんて思ったことはない!」


ばさり、と台本が
乾いた音を立てて落下した


「でもね、いつかはそうなるから。アイドルに恋愛は御法度…バレたらタダじゃ済まないっていうのはわかってるでしょ?」

「だが!」

「もう終わりなんだよ!」


どうしてわかってくれないの?
このままじゃ駄目なんだよ
そう言った私の頬は
濡れていた気がする

私はソファーから立ち上がり
玄関へ向かった


「待ってくれ、姫!」

「…これからは別々に歩いていこう。ユニットは社長の許可が降り次第解散」

「何故そんな!…っ待ってくれ!」


私は一度も振り返ることなく
部屋を出た



わかれ道の先にあるのは
破滅だと気付いたの







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