エデンにさよなら
(切?/甘/暗/死/パロ)



※軍人パロ/心中話






「本当に、いいんですか?」

「さすがの俺も今回ばかりは冗談は言わないよ」

潮風が吹き抜ける
夜の海辺の岩壁の上に
一人の少女と一人の軍人がいた

「むしろ姫こそいいの?」

「私は臨也さんと一緒にいられるのならば何だって構いません」

「相変わらずだね」

「臨也さんこそ」



ことのはじまりは
数ヶ月前に遡る

この国は外国と戦場をはじめた

そこで、少女─姫の恋人であり
軍人の中でも上位である折原臨也は
戦地に赴かなくてはならなくなった


普段なら直ぐ命令に従い
戦地に赴く臨也だが
今回は違った

姫を連れて軍から逃げたのだ


理由はいたって簡単なものだ
どんなに足掻いたところで
この国は戦争に負ける
戦地に赴けば二度と戻れない
そう悟ったからだ


姫を置いて死ぬことはできない
だから戦地には行けない

それならば
軍から逃げねばならない
命令に背いた者には
容赦ない制裁が下される

しかし、姫を置いて
逃げることはできない

軍は逃げ出した本人が
見つからなかった場合に
代わりとして家族や恋人殺す

二人で逃げる
それしかなかった


山を越え、林を抜け、川を下り
追っ手から逃げていくうちに
海に辿り着いた

しかし、戦争中であるがために
簡単に国をでることは出来ない
海を渡って逃げることは
不可能だった


“ここまでか”
あと数日もすれば
追っ手が来るだろう
これ以上は逃げられなかった



「ごめんね、姫。ここまでみたいだ」

「いいえ、まだ行けますよ」

「この先は海だ。もう進めない」

「海があるじゃないですか」


姫は少し離れた所にある
岩壁へと足を向けた
臨也は直ぐに後を追った

岩壁へ着き下を見下ろす姫に
臨也もつられて覗いてみる

かなりの高さがあった
眼下の海は波が荒い場所で
岩も目立っていた


「ここから飛べば、逃げられます」

姫は視線を動かさずに呟いた
臨也はほんの少し
考える素振りを見せると

「なら逃げようか」

と言った


そして冒頭に戻る


「本当に、いいんですか?」

「いい加減しつこいよ?答えは決まってるから」

夜に浮かぶ二つの影が重なった

「姫、ごめんね」

姫を抱き締める腕に力がこもる

「謝るなんて臨也さんらしくないですね」

「ごめん…」

「臨也さん。愛してます」

「俺も、この世で一番姫を愛してるよ」


波の砕ける音が
一際大きく響いた



─エデンにさよなら

縛り付けられた身体では
エデンから逃げ出せないから
だから僕たちは
身体を捨てる選択をした







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