一時の気まぐれ (切/甘?)


※砂月=那月






とある星降る静かな夜に
一組の男女が向かい合い
何やら話をしていました

「冗談、でしよ?砂月くん…」

「うるせぇな、何度も言わせんな」

その話とは別れ話

「そもそも、お前なんかどうでもよかったんだよ。那月が気に掛けていたから構ってやっただけだ。それに、お前は那月じゃなく俺を選んだ。」

「だって、それは…それは、私は砂月くんが…」

「俺が好きだから、って?笑わせんなよ。」

男、四ノ宮砂月は
どこまでも冷たく淡々と話す
その口から出る言葉は
まるで研ぎ澄まされたナイフの様に
女、姫の心を突き刺し引き裂いていく


別れ話を切り出されてから
だいぶ時間が経った
しかし、未だに決着はつかない
いや、ついてはいるが
姫は未だに諦めきれず
必死に食い下がる

「で、でも、砂月くんも…」

「好きだったでしょ、とでも言いたいのか?本当におめでたい奴だな。はじめからお前なんて何とも思ってねぇよ」

「そん、な…」

「…もう二度と俺の前に現れるな」

決着が、ついた
砂月はその場から立ち去り
残された姫は膝をつき
泣き崩れる

「っどうして、どうして…砂月くん…っ!」


一方、立ち去った砂月も
苦虫を磨り潰したような表情をしていた

「…これでいいんだ」

後ろから姫の泣き声が
聴こえてくる気がした

「俺は影だ…影が光より前にでちゃならない、だから…これでいいんだ」

独り呟き、ぎゅっと拳を握る

自分はいずれ消える身
そして、消える日は近い

それを理解しているからこそ
本当は大切な姫に別れを告げた
酷い言葉で出来る限り傷付けて
叫び出したくなる衝動を
必死に押さえ付けて


「…那月、姫のことは任せたからな」

今は眠っている
自分の光にそっと告げて
独り、また呟く

「俺は姫のことなんか愛してなかった…全部気まぐれだったんだ」

まるで自分に言い聴かせる様に



一時の気まぐれ
だから、忘れてよ、
愛したことなんて


((じゃないとお前が悲しむだろ?そんな顔は、させたくねぇんだよ…))







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