無理な話 (切)








先祖返りが経営する病院の一室

音もない
ただ静寂のみが支配する
真っ白な一室
対称的に部屋の窓の外は
真っ暗だ


私の意識も白くなったり
黒くなったりしていて
もうダメだとわかった

音が聞こえない
声も出ない
腕も上がらない
目蓋を開けていられない

身体が全く動かなくて
感覚という感覚は
麻痺したかの様に
まるで何も感じなかった

もうダメだとわかった


元々短命な妖怪である私にしては
よくここまで生きれたと思う

今までの“ワタシ”は
二十年と生きられなかった
そう考えると、二十年以上も
生ることのできた私は
本当によくもったと思う

もう十分生きた
だから、寝てしまおう


そう思って目蓋を閉じると
何も感じなくなっているはずの手に確かな温もりを感じた


握っているのは
きっと残夏だろう

見えはしないが
慌てて部屋に入ってきた
そんな気配がする

聞こえはしないが
私に向かって何かを言っている
そんな気配がする

泣いているそんな気配がする


意識が闇にのまれそうになる
ダメだよ待って
まだ、もう少しだけ…


霞む意識の中で
私は神様とやらに
最初で最期のお願いをした


次に生まれて来るときは
残夏の命の一部として
生まれて来られますように…



なんて、無理な話なんだけどね



わかってるよそんなこと。
それでも、願わずにはいられないの


そこで私の意識は闇の中に落ちた







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