二人の日常(切)


※姫=孤児院の幼馴染み






リビングまで降りて
おはようと言ってみる
小さな弟,妹達は
まだ眠そうに目を擦りながらも
おはようと返してくれた

院長先生が作ってくれた
朝ごはんを食べながら
空席を見つめた

この家に、彼─音也はいない
アイドルを目指すために
あの有名な早乙女学園へ行った


音也がいなくなってから
もう半年以上は経つが
一緒にいた時間が長かった分
片割れがいなくなったかの様な
漠然とした虚無感が
未だに胸の奥で燻っている


朝ごはんを胃に押し込んで
自室に戻った


静まり帰った部屋に入れば
思い出すのは彼のこと

音也がいた頃は
もっと賑やかだった
もっとたくさん笑った

一緒にいることが普通だった
彼の笑顔を景色の一部と見ていたくらいに


二人でいた日常は
気付かぬ内に
私の心や体を侵食していた
甘く、甘く

音也がいなくなった今
写真に写る彼の笑顔すら
霞んで見える


酷く悲しくて、もう一度
おはようと言ってみたが
やはりあの元気な返事は
聞こえなかった



こうやって今まで
繰り返してきた二人の日常も
時間の波にのまれて
遠く霞んでいつかは
なくなってしまうんだね








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