ひとつだけのことば
(ほのぼの/甘)



※姫=来栖の専属作曲家兼恋人






決して狭くはない、
むしろ広い部屋
シャイニング事務所所属者の寮
その一室に一組の男女…いや、まだあどけなさの残る少年と少女の姿があった


少年は駆け出しのアイドル、来栖翔
少女はその彼の専属作曲家、姫

二人は今日も姫の部屋で
新曲に向けての会議をしていた

二人きりの部屋
隣に座ったソファー


「んー…ここはさ、もうちょっとこうした方がいいんじゃねぇか?」

少年は譜面を指差し言った

「え?どこ?」

少女は譜面に手を伸ばした


「…っ!!」

指先がちょこんと触れた
たったそれだけなのに
二人とも、ものすごい勢いで
大袈裟に手と手を遠ざけた

「ご、ごめんなさいっ!」

「いいいいや、別に…なんだ、気にしていない、からさ…うん。き、気にすんな!」

どちらの頬も一瞬にして
ほんのりと桜色に染まった


そこから会話はない

会議をしていたはずなのに
手が触れてからは
一切会話がなくなり
お互いにソワソワしはじめ
壁を見たり床を見たり
主題であったはずの
新曲の譜面などには目もくれない


長い沈黙が続き
おもむろに少年が口を開いた

「その…なんだ、えっと…」

二人きりの部屋で
やっと出てきたのは、
ひとつだけの言葉

「なんつーか…俺さ、やっぱ姫が大好きだ」

単純な言葉
しかしそこには
たくさんの愛が詰まっている

「わ、私も、私も翔くんが好き…大好き」

少年に応える様に少女も
想いを口にすれば
お互いに顔をあわせて笑いだす


「さてと!会議、続けようぜ」

「うん!絶対にいい曲にしようね!」

「おう!あったりめーよ!!」



─ひとつだけのことば
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