懐かしい歌 (無糖?)
※名前変換なし
早乙女学園の
ばかでかい校舎を出て寮に向かう
既に日が落ちてしまっているせいか
周りに人がいる気配はない
ただひたすら足を動かす
そうしていると
どこからか歌声が聴こえてきた
甘い声色ではあるが
僅かに憂いを帯びた様な
寂しげな歌声
懐かしい歌だった
─俺はこの歌を知っている
そう思った瞬間
俺は声のする方に走った
「っどこだ…!?」
走って走って走って走って
はやくこの歌を、
声を捕まえたい
その一心で走った
だけど俺の身体は
途中で悲鳴を上げた
そうしているうちに
歌も止まってしまった
「はぁっ…はぁ、はぁ…くっそ…!!」
─また捕まえられなかった
そこで俺は気が付いた
なぜ“また”なのか、と
暴れる心臓を押さえつけながら
今度は必死に頭を動かした
確かに聴いたことのある
歌と歌声だった
では、どこで聴いたのか
なぜ自分は知っているのか
「っはぁ、はぁ……わっかんねぇ…」
俺は道の脇の小道に入って
木の根本にもたれ掛かった
「なんで、知ってるんだよ…どこで聴いたんだよ、俺…」
目を閉じてまだ少し荒い呼吸を
整えながら自問自答する
するとうっすらと見えてきた
白い建物、パジャマ、車椅子、
点滴、ベッド、女の子…
「そっか、ガキの頃入院したときに聴いたのか…」
─あの女の子から
名前も顔も思い出せない
幼い頃に病院で出会った女の子
そもそも名前なんて
知らないのかもしれない
それすらもわからない女の子
それでも確かにその女の子は
この学園にいる
そして歌っていた
俺の中で何かが繋がった
「ぜってー見付けて、名前聞いてやる…」
俺は再び寮へ帰るべく道に出た
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