空は少しだけ (悲?/切?/無糖)


※姫視点






「もう来なくていいよ。君はいらないから。」

先程告げられた言葉が
脳内でリピートされる
何度も、何度も
まるで呪いみたいに

その呪いの言葉を告げたのは
池袋の情報屋、折原臨也
私が仕事を手伝っていた人
雇い主だった人

私は一年程前に
ひょんなことから
折原臨也がやっている
情報屋の手伝いをすることになった
はじめは正直
乗り気じゃなかったけれど
元々ネットワーク関係に強かったこともあって、仕事はすぐにできるようになった
それに、何より給料がよかった
残業があったのは
少々大変だったけれど、
それにみあった見返りがもらえた
私にとっては楽な仕事だった

それなりの仕事をして
それなりの給料を貰う
お互いに有益な話だった


では何故あんなことを言われたのか

それは私が
彼に好意を抱いてしまったから

彼は初仕事の日に言った
「もしも君が俺に惚れたら即刻クビにするから」と

誰が惚れるかよ
なんて思っていたのに
まんまと惚れてしまった

惚れてしまってからは
隠そうと必死で
それが仇になった

バレてクビ

それが今の私

路地裏を通り抜けている私は
一人、呟いた

「なんで惚れちゃったかなぁ…」

自問自答
口に出したところで
答えが見つかる訳でも
あのクビ宣告が
なかったことになる訳でもない

ゴミ捨て場にいた黒猫が
にゃあ、と鳴いて歩いていった

その姿はあの雇い主に
そっくりな気がした

「どんだけ惚れてんのよ、アホらし…」

どんなに足掻いても
先程の宣告が覆されることはない
もう彼の側にいることはできない

「本当に、どうして惚れちゃったかなぁ…」

黒猫から視線を剥がし
私はまた路地裏を歩き出す


─ぽつり、ぽつり、

どんよりした空から
雨が落ちてきた

まるで泣いているみたいに



─空は少しだけ
 私に同情して
 私の代わりに泣いてくれた







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