さよならの練習 (切)


※姫=レンのパートナー兼恋人






「夕食後にレコーディングルームでレッスンでもしようか」

レンの一言で始まった練習は
思っていたよりもかなりはかどった


レコーディングルームの壁に
掛けられている時計に目をやれば、
時刻は夜の11時
練習を始めたのは
7時を少し過ぎた頃だったから
ざっと4時間はやっている


「…そろそろ終わりにしない?」

小さな机を挟んだ向かい側で
机の上の一枚の譜面と真剣に
にらめっこをしているレンに
話しかける

「あぁ、もうこんな時間か…そうだね、今日はここまでにしよう。あまり遅くなると明日が辛いだろうしね」

時計を見たレンは練習終了を告げた


私は使っていた機材の電源を切った
その間、レンは譜面をまとめ
ファイルにしまっていた

荷物をまとめて
レコーディングルームから出て
鍵をかけ、鍵を戻しに行き
二人で寮へ帰る


並んで歩く寮へと続く道
レンが譜面を見ながら
いくつか質問や提案をした
私はそれに答えたり
更に提案したりした
それ以外にした会話は
夕食は何を食べたかだったり
今日の授業についてだったり
とりとめのない話だった

特に楽しいという様な会話は
何もなかった
そう、思う
思わなければならない


「レディ、何だかつれないね」

先日、学園長に釘を刺された
“この学園は恋愛禁止だからな”と
きっと学園長は
私達の関係を知っている
知っているからこそ私に釘を刺した
恋愛は禁止だ、と
要するに
レンと別れろということだろう

別れたくない

だけど、レンがアイドルになるためには別れなければならない
あのシャイニング早乙女に
睨まれてしまえば、
芸能界で生きていくことは出来ない

レンはアイドルになるべき人だ
私はレンを応援したい
レンがアイドルになるために
私と別れなければならないなら
それなら、私は…


「…姫、聴いてる?」

思考の海に沈んでいた私は
名前を呼ばれ我にかえった

「え?あ…ごめん、聴いてなかった」

「だろうと思った、もう着くよ?」

いつの間にか前方には
寮が見えていた


「姫、今日は遅くまでお疲れさま」

持ち上がったレンの手
きっと頭でも撫でるのだろう
私はスッと一歩下がって
その手を避けた

「お疲れさま…じゃあねレン、さよなら」

そして直ぐに別れを告げた
さよなら、と

「また“さよなら”か…永遠の別れでもないのに、なんだか寂しいな…っていつも言っているだろ?」

中途半端に持ち上がった手を
気まずそうに下ろしながら
諭すように話すレン

「そうだったね…うん、さよなら」

それでも私は告げる
さよなら、と

「全く…そんな君も可愛らしいよ。おやすみ姫、また明日ね」

「さよなら、レン…」



─さよならの練習

近いうちに
君に言わなきゃならない
その時、ちゃんと言える様に
私はさよならを言う練習をするの







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