心の穴 (悲/切/暗)


※姫視点
 御狐神=姫のSS






心に、ぽっかりと
穴が開いたみたいな
そんな気持ち


双熾は私のSSだった
いつも私の一歩後ろを歩いて
犬みたいにくっついてきて
片時も離れなかった

だけど今、私の後ろに
彼の姿は、ない
世界中どこを探しても
彼の姿は、どこにもない

もう二度と私の一歩後ろを歩いてくることも、犬みたいにくっついてくることも─ない


彼がいなくなってから
紅茶は自分で淹れるようになった
でも、自分で淹れた紅茶はまずかった
彼の紅茶がとっても美味しかったから余計にそう思った


((ずっと姫様のお側におります))

そう言っていたのに
彼はもう、いない


「別に、愛して欲しいなんて思わなかったよ…?」

まずい紅茶を眺めながら
口からこぼれた言葉

好きって言って欲しいとも
ずっと側にいるって
言って欲しいとも思わなかったよ
欲張りなことは願わなかったよ

なのに、どうして?
どうして彼は死んでしまったのかな


私が願ったものはなんだった?
私が求めたものはなんだった?

ただ、生きていてくれれば
それだけでよかったのに


皆から優しくしてもらっても
夢の中で彼と出会えても

心の穴は埋まらない
ぽっかりと開いたまま
埋まらない

まずい紅茶を飲み下すたびに
その紅茶が心の穴に落ちて
溜まっていく気がする
穴を埋めようと必死になって
結局心の穴は埋まらない


「…なんで死んじゃったの?」

まずい紅茶に映り込む私は
泣いていた


いなくなってから気が付いた

「好きだったのに」

心の穴は埋まらない
虚しさに震えても
孤独に涙しても
その穴は、埋まらない



─あなたでなければ
 この穴は埋められなかったのに







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