目線の理由(悲/切→甘)


※姫視点
 姫=翔のパートナー






あなたの目は
いつもあの子を追っている
神宮寺さんの隣にいる
あの可愛らしい子を


「で、ここなんだけど…」

「…」

ほら、また
私の作った譜面よりも
あの子の方を見て
私の話なんて聞いてくれやしない

「…翔くん」

「あ、あぁ悪い…で、何だっけ?」


その程度なの
私がパートナーであることに
特別な意味はないの


「…今日は、もう終わりにしましょうか」

「え…?」

「お疲れ様でした…」

私はさっさと荷物をまとめて
翔くんの制止の声も聞かずに
教室を飛び出した


寮へと続く道を少し脇にそれた
木々の生い茂っている所で
膝を抱えて座る

ここなら誰にも見つからない

頬に雫が伝った


しばらくすると空からも
ポツリポツリと雫が落ちてきて
私の雫と溶け合った

私が泣いているのか
空が泣いているのか
どうでもよかった


空からの雫は次第に強くなり
ザアザアと落ちてきた


「…どうやったら好きになってくれる?」

雫が弾ける音に
紛れてしまう様な小さな声
届かない告白
実らない想い
返ってこない答え

その筈なのに

「答えはもう出てるだろ?」

返ってきた音

「翔くん…何で……」

視線を音源へ移せば
びしょ濡れになって立っている
彼がそこにいた


「俺様が直々に迎えに来た、それが答えじゃ足りない?姫も大胆な事を言うなぁ」

それが答えだなんて
あり得ない、そんなこと
だって…

「だって翔くんは、神宮寺さんのパートナーさんが…」

好きなんでしょう?

続くはずだった声は
音にできなかった
音にしてしまえば
終わってしまう気がしたから


「あれは、だな…その……どうやったら女の子が喜ぶのか、レンを観察してたんだよ…」

「……え?」

「だ、だから!どうやったら姫を喜ばせられるか、レンを観察して考えてたんだよ…」


雨が、止んだ


「ほ、ほら…帰るぞ。明日もまた練習するんだからよ…」

差し出された右手



─あなたの手をとるまであと10秒



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