ひとりぼっちを知るあなた
(シリアス?/無糖)



※姫視点






午前中の授業が終わり
昼休みになった

昼休みになると
ほとんどの生徒は食堂に行ってしまうか
教室で弁当や購買の品を食べる

私はどちらでもない
朝、購買で買っておいた
惣菜パンを持って屋上に行き、
そこで一人で食べる

今日も屋上に行こうと席を立った
そうしたら

ほら、また来た


「姫さん、また一人で屋上に行くんですかぁ?僕もご一緒してもいいですか?」

「…ほっといてって言ってるでしょ?」


─四ノ宮那月

私に絡んでくるお人好しな奴


私のパートナーは
恋愛禁止令を破ったせいで退学になった

私はパートナーがいなくなっても
別に悲しんだりはしなかった
“薄情な奴”
それが皆の私に対するイメージで
元々口も悪かったせいもあり
私に絡む輩はいなくなった

今日もまた
四ノ宮那月に悪態をつく


「いい加減にしてくれない?私は馴れ合いをするためにここに来た訳じゃないの」

そうだ、
私はプロになるために
この学園に来たのだ
だから、トモダチなんて…


「でも、姫さん、寂しそうな顔をしていますよ?」

「なっ…!?」

「本当は皆さんとお友達になりたいんじゃないんですかぁ?」

「…っうるさい!」


私は昼食を持って教室を飛び出して
逃げるように屋上まで来た

トモダチなんて、いらない
皆ライバルだ
馴れ合いなんてしている暇はない


「っなんだって言うのよ…!」

─ガシャン

フェンスを蹴り飛ばす
虚しい音が、響いた


─ガチャリ

屋上のドアが開いた

「やっぱりここにいましたか」

またあいつだ

「っ四ノ宮…」

「はい、僕です」

まただ

「…何しに来た」

「お友達になりに来ました」

どうしてそこまで

「ふざけないで」

「ふざけてません。僕、姫さんの気持ちわかるんです…ひとりぼっちは、辛いですよね」

「…何言ってるのよ」

声が震えた

「ひとりぼっちでいるのは、辛いから…だから、ね?僕とお友達になりましょう?」

そう言って四ノ宮は
私に手を差しのべた


その顔は哀れみを浮かべている訳でも、
冷やかしている訳でもなかった

ただ、ただ
優しく微笑んでいた

しかし、それは酷く切なげで
ひとりぼっちでいるという
底のない切なさを
果てしない虚無を
震える程の寒さを

この人は知っているのだと
そう思った



─だから私は
 あなたの手をとった



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