息を殺して(砂月/悲/切)


※砂月視点  砂月=那月






「やだ、やだよ…」

俺の腕を掴んで離さない姫

「仕方ねぇだろ。俺は那月の影なんだからよ」


もう二度と出てこない
つまり消えると言った

那月は幸せになった
幸せになれる、
ならなきゃいけない

なら、俺はいらない
いてはいけない
消えなきゃならない

那月の幸せは
俺が待ち望んだことであり
俺の存在意義であり
理由である

消えることは
辛くも苦しくも悲しくもない
そのはずなのに


「消えちゃうなんて…そんな、やだよ…っ」

「…泣くな」


こんなにイタイのは何故だろう


「那月くんだって!那月くんだって砂月くんにいてほしいはずだから!だからっ!!」

姫の泣きながら叫ぶ姿は
俺の決意を引っ掻き回す

イタイ、いたい、痛い
心臓が、ココロが、イタイ


「…もういい」

「よくないよ!だって…消えなきゃいけないなんて、おかしいよ、おかしいよ、そんなの…っ」

ぽろぽろと溢れる涙は
俺の服に、腕に、
ココロに、落ちる


「…泣くな」

何故か視界が歪む

俺はたまらず姫を抱き締めた


お前が楽しそうに話すから
お前が困ったように笑うから
お前が嬉しそうに泣くから
お前が悲しそうに怒るから
お前が俺の手を握るから
お前が、お前が、
お前が、隣にいたから

俺は、涙脆くなった


歪んだ視界は
溢れて、零れ落ちた

「泣くな、泣くな…っ!」

言い聞かせる様に叫んだ


その対象は
お前か、俺か、




─息を殺して、泣いた



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