ずるいひと(シリアス/歪?/無糖)


※那月視点 那月メンタル弱






姫さんは、ずるい


「僕とさっちゃん、どっちが好きですか?」

「なっちゃんとさっちゃん?」

「はい。僕とさっちゃんです」

「私は“四ノ宮くん”が好き」


ほら、まただ
“四ノ宮くん”と
曖昧に答えるだけで
決して“どちらか”を選ばない


「だって、なっちゃんもさっちゃんも大好きだもの」

「強いて言うならどっちですか?」

「“四ノ宮くん”」


そうやっていつもいつも
すり抜けて行くから
不安になる

“四ノ宮くん”が好きというのは
本当はどっちも好きなのではなく
どっちでもいいのではないか
どっちも要らないのではないか、と


「…ギュってしてもいいですか?」

「どうぞ?」


だからこうして
心までは抱きしめられなくても
せめて体だけでも抱きしめる


「姫さん…」

「なぁに?なっちゃん」

「僕のこと、好き、ですか?」

「好きだよ」

「これからも、ずっと一緒にいてくれますか?」

「もちろん」


姫さんは、ずるい

“ずっと”なんて無理なのに

それでも、僕が
姫さんの言葉を否定しないのは
続くはずのない“ずっと”に
淡い希望を抱いているから


「僕とさっちゃん、どっちが必要ですか?」

「“四ノ宮くん”が必要」

「そう、ですか…」


姫さんは、ずるい


そのずるさを否定しない僕は
もっとずるい



─ずるいひと
 それでも僕はアイシテル



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