降涙量(切)


※姫=真斗のパートナー
 姫→真斗→春歌






一日の授業が終了し
解散になった教室を出ていく人の中に
姫の姿はあった

「姫っ!このあと時間ある?」

教室を出てすぐに
友人の友千香に話しかけられた

「友ちゃん!…ごめんね、今日はちょっとよるところがあって…」

姫はこの後サオトメートで
五線譜を買うつもりだった
せっかくの誘いを断るのは
心苦しかったが、
すぐに必要な物だったため誘いを断った


「そっか…なら仕方ないね、また誘うよ。それじゃあ、また明日ねー」

「うん、ありがとう。また明日、バイバイ」

手を振り別れを告げた姫は
サオトメートへと向かった


***


「あった…!」

姫はサオトメートにつくなり
すぐに五線譜を手に取り
レジへ並ぼうとした



「うっわ…お財布教室に置いてきちゃってるよ…」

仕方なく店員にこの五線譜を
取っておいてもらうことにして
財布を取りに教室へ走った

「もぅ、何で置いてきちゃったかなぁ…二度手間じゃない」


パタパタと階段を駆け上がる
その足が急に止まった

「…ピアノ?誰が弾いてるんだろう」

突如聴こえてきた
やわらかなピアノの連弾
その音は姫の目指す教室からだった

姫が教室につく頃には
連弾は止まっていた
ドアの前に立つと
声は聞き取れないが
教室の中で誰かが
話しているのがわかった

姫は閉められているドアに
手をかけ、開けた


─ガラリ


教室の中にいたのは
姫のパートナーの聖川真斗と
友人の七海春歌だった

二人は寄り添う様に
ピアノの前に座っていた
この状況からして、先程の連弾は
この二人がしていたのだろう


「あっ、姫ちゃん…!」

先に姫に気が付いたのは春歌だった

「ど、どうしたんですか?」

ガタリと立ち上がり
慌てたように話し出す春歌
その横でほんのりと頬を赤く染め
鍵盤を見つめている真斗

どう見ても二人は
いい感じだった様だ
要するに、姫はお邪魔虫だった


「ちょっとお財布忘れちゃって、邪魔してごめんね、すぐ帰るから」

そう言って自分の席へ行く

「じゃ、邪魔だなんて、そんなこと…!」

春歌の少し裏返った声を聞きながら
机から財布を取り出しドアへ向かった

「じゃあ、二人ともまた明日ね!」

そう言い残し走り出す

その足は来た道とは違い
屋上へ向かっていた


誰もいない屋上に駆け込み
フェンスにしがみつき息を整える

しかし、息は一向に整わない

「っ…」

やがて地面に小さな雨が降った
その雨は止まず
量はどんどんと増すばかり

「好き、好きなのに…っ」



─降涙量
 あとどれだけ涙を流せば、
 この想いは君へ届くのだろうか



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