君と共に(切/甘/血)


※姫=アリス チェシャ視点






「君はアリスでいられて幸せだったかい?」


それは今僕が一番知りたいこと

『はい、幸せでした』


姫ちゃんは静かに頷いた


「そっか…―」


―バァンッ


僕は姫ちゃんに銃口を向け
引き金を、引いた


((私は私のまま死にたいの、アリスにはなりたくないの))

だから私を殺して、と
僕に頼んできた


僕は、姫ちゃんの望み通りに
銃口を向け、その引き金を引いた


鉛の弾が姫ちゃんの胸を貫いた
鼻につく硝煙のニオイ

姫ちゃんの瞳は大きく見開かれ
それから直ぐ、苦悶の表情を浮かべ
その場に膝をついた

鉛の弾に貫かれた胸からは
紅い血が滲んでいる


僕はすぐに姫ちゃんの元へ走った

そして姫ちゃんを抱き締めて


「―ッごめんね…ごめんね」


何度も何度も謝った


やはり、いくら愛しい人の
お願いだからって
その愛しい人を手に掛けた
自分が許せなかった


「ごめんね…ごめんね」


僕は謝らずにはいられなかった


そんな僕を見てか、
姫ちゃんは血の気の失せた唇を
少しだけ緩ませながら
蝶がはばたく様な微かな声で


『ありが、と……幸せ、でし…た…』


確かにそう呟いた


僕はどんどんと冷たくなっていく
姫ちゃんを強く抱き締めた


『なか…っないで……だい、じょうぶ…また…いつ、か……っあえ…るか………ら…─』


そして、最期の呟きと共に、
姫ちゃんの瞳から光が消えた

光の消えた虚ろな瞳から
一筋の涙がこぼれた

その涙は、まるで姫ちゃんが
『一人にしないで』
と言って泣いているかの様に見えた


「…大丈夫。君を一人にはさせないよ…。僕も今すぐ逝くから…」


─バァンッ


僕は姫ちゃんの生を
終わらせた物と同じ物で、
僕自身の生も終わらせた


風が吹いた


僕は広い原っぱの真ん中にいた

そして、
目の前には僕の愛しい人がいた


「やぁ姫ちゃん、また逢ったね…」


僕がいつもみたいにそう言えば、
姫ちゃんは困った様に笑いながら

『チェシャが来る必要なんて、なかったのに…』

と言った


「君のいなくなった無意味な世界でなんて生きていけないんだ。僕の世界は君そのものなんだから」

『…チェシャ』

「もう二度と離れない…離れたくない…愛してるよ」


抱き締めて愛を囁けば
姫ちゃんも小さく
『私も』
と囁きかえしてくれる


そして、
僕は君の手をとって歩き出した
もう二度と離れない様に、
その手をしっかりと握り締めて



─君となら何処までも



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