後悔を知った日(切/悲/血/死)


※ヴィンセント視点






「おはよう、起きて…?姫…」

カーテンを閉め切り
光すら遮断した部屋に二人

僕はベッドに腰掛けて、
そに横たわる人物に手を伸ばす
触れた頬は冷たく、反応もない

横たわる姫の隣には血塗れの鋏
そして血塗れの僕の手


─あぁ、壊しちゃった


本当に大好きで
大好きで大好きで
愛しくて愛しくて仕方なくて
僕だけのものにしたいと思った

だから、

大好きな愛しい姫を
僕の部屋に強引に呼び出して
閉じ込めた

だって、
誰にも渡したくなかったから


抵抗する姫が
可愛くて愛しくて
僕を睨み付けるその瞳が
僕だけを写すことが嬉しくて


だから少しだけ

少しだけ、壊したいと思った
人形を壊す様に姫を


最初は反応があった姫
しかし、今となっては動かない

虚ろな瞳
流れ落ちた紅と透明
冷たくなった躯

僕の中にぽっかり空いた穴

「……姫…」


何故だろうか
あんなに壊したいと思ったのは
自分なのに
こんな事をしたのは
自分なのに
何かが抜け落ちてしまった様な感覚


違う、駄目だ
僕は嬉しくなくてはならない
僕は喜ばなくてはならない
人形を切り刻んだ時みたいに
笑っていなくてはならない

「これで…いいんだ、これでいいんだよ…だって、これで姫は僕だけのものでしょ…?だから、僕は間違ってない…」


光すら遮断した暗い部屋の中
僕は笑顔を浮かべて
冷たくなった姫の唇に
キスを落とした


そう、これでいい
何も間違っていない
でも、何故だろうか

笑顔の筈の僕の頬には
一筋の水が伝っている

分からない、分からない
何故こんな気持ちなのだろうか


「でも、さ…姫……やっぱり、起きて?起きてよ……」


僅かに震えた僕の声は
暗い部屋に溶けて消えた
酷く虚しかった


ねえ、姫…
君が眠っている世界は
詰まらないんだ


冷たくなった姫を
人形の様になおすなんて出来なくて
ずっと壊れたままで
決して戻ることはなくて


せめてもう一度声が聴きたい
あの綺麗な瞳が見たい
もっと言葉を交わしたい
もっと君に触れたい
なんて思ったけど
それも全部、
今となっては叶わない



─後悔を知った日

 後から悔いる
 だから後悔なんだね



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