キモチに蓋を(切/悲)


※ブレイク視点






愛してる
愛しいてる
誰よりも何よりも
愛しているんだ

でも、だからこそ、
見て見ぬフリをする
気付かないフリをする

自分のキモチに蓋をして

そうやって何度も何度も
君を傷付けてきたのに、何故?
何故君は、
まだワタシのことが好きだなんて


「ねぇねぇ、ブレイク」

「…なんですカ?」

「あのね、美味しそうなケーキ貰ったんだけど…」

「ヘェ、良かったですネ」

「う、うん。だから…一緒に食べない…?」

「あー…、私はけっこうデス」

「そっ…か。うん、分かった」


姫の顔が笑っていても、
それが無理に作ったものだ
ということはすぐ分かる

その笑顔の裏で
涙を流してしまいそうなになるのを
必死に堪えているのも
奥歯を噛み締めて
必死に嗚咽を堪えているのも
小さな拳を握り締めて
やり場のない思いを
必死に堪えているのも

全部全部、知ってる

ずっとずっと、
君を見ていたから


「…あのさ、」

ぽつりと漏れた姫の声は
やはり微かに震えていた

「…ブレイクは私のこと、嫌い?」

ついに溢れ落ちた涙
濡れた目で真っ直ぐに
ワタシを見つめてくる
その眼差しに、
心が揺れるのを感じた

ここで全部何もかも
本当のことを言えば
きっとワタシは
楽になれるのだろう


しかし、
ワタシはそれをしてはいけない
自分のキモチに
蓋をしなければならない
この先の未来で
姫が笑っていられるように


「あなたのことですカ?…嫌いも何も、何とも思っていませんヨ」

少し眉間にシワを寄せ
不機嫌そうに言うと
姫の目が大きく見開かれた

涙が彼女の頬を転がり落ちる


「…そ、だったんだ。ごめんね、変な質問して」

「いえ、別ニ…」

「それでもね…私ね、ブレイクのことが…」


嗚呼、どうか
どうかそれ以上言わないで

きっとその言葉を聞いたら
ワタシは自分のキモチに
蓋をしておくことは
できないだろうから


「好き…だった、の」

一瞬、世界から全ての音が
消え去ったような気がした

「…うん、好き、だった」

それから彼女は笑って言った

「…バイバイ」


ぱたぱたと走って遠ざかる足音を
遠くで認識した
気が付くと
目の前に姫はいない
いつの間にか彼女は
ワタシの視界から出ていったようだ


「これで…良かったんですよネ」

姫の愛を受けとめても
いくらワタシが彼女を愛しても
所詮、終わりが見えている
先の短い命


失恋の痛みより
更に大きな死別の痛みを
姫のあの小さな背に
背負わせるなんてしたくないし、
できるわけがない

心にぽっかりと大きな穴が
開いたみたいではあるが、
不思議と穏やかな気分だった


「愛してますヨ、姫…昔も、今も…」


どこかで、誰かが、
啜り泣くような声が、
聞こえた気がした



─このキモチには
 蓋をして鍵をかけよう


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