人形遊び(甘)


※姫視点





ふと思った、だから言ってみた

「ねぇザクス」
「何ですカ?」
「エミリーちょうだい」
「…は?」

私の言葉に良く分からないという顔をするザクス

「だから、エミリーが欲しいって言ったんだよ」

私は真剣だ

だって、エミリーは可愛い
皆は不気味だって言うけど
なんていうか、
見てると抱きしめたくなる衝動にかられる
その青い顔も手足も
少しウェーブのかかった髪も
何もかもが愛らしいのだ


「いくら姫君のお願いでも嫌ですヨ。まぁ、触るくらいなら良いですケド」

そう言って私の目の前にエミリーを差し出してくれた
私は差し出されたエミリーを受け取り抱きしめた


「何だか、不思議な感じですネェ…あんまりカワイイ物が好きではない姫君がまさか人形好きなんてネ」

不思議そうな目で見てるザクスをよそに
私はエミリーに頬を寄せる
あぁ、愛らしい


「確かにカワイイ物に興味ないけど、エミリーは好き、カワイイ…エミリーがいい」

「そうですカ?エミリーは結構皆さんには不気味に思われていますヨ?」

「私はそうは思わない。皆はなんでこの愛らしさがわからないんだろう…」


私はエミリーにそっとキスをする

「あっ、駄目ですヨ!」

「別にいいでしょ、減るものじゃないんだし」

「駄目なものは駄目なんデス!」

むっとする私

「何で駄目なの?理由は?」

「理由と言われましても、駄目なものは駄目なんデス」

理由も無しに駄目とは、良くわからない
そう思っていると、腕の中のエミリーがカタカタ言い始めた


『アイツは俺に嫉妬してんだぜー』

「あっコラ、エミリー!」

嫉妬?誰が嫉妬してるんだ?
心を読んだかの様に、またエミリーが話し始める


『俺がお前に可愛がられてるから嫉妬してんだぜー』

「エミリー、それ以上何も言わないで下さイ」

「ザクスが嫉妬?珍しいね…で、誰に?」

『お前鈍いなー』

それ以上エミリーが喋ることは無かった


「鈍いって何がよ」
「あー…もういいデス」

ひょい と私からエミリーを取り上げるザクス


「あっ、エミリーが…」
「もう駄目デス」
「ザクス、返してよ」
「元はといえば、私の物でショウ?」

「…何でもするから代わりにエミリーを貸して」

エミリーが欲しさに言った言葉


「何でもですカ?そうですネェ…では、私にもキスして下さイ」

笑顔で言うザクスに一瞬戸惑った

「…っできる訳ないでしょ」

「では、エミリーは無しと言う事デ」

それは困る
仕方無い
愛しいエミリーのためだ

「…分かった」

「姫君はそんなにエミリーが欲しいのカイ?」

私はザクスの傍に近寄り彼の頬にキスをする
チュっと言うリップ音


「うーん…まぁ、良く出来ましタ」

「…っ」

ザクスは微笑みながら私の頭を撫でる
私は勢い良くザクスの肩からエミリーを奪い腕の中におさめ、彼から離れ、エミリーと遊び始める


***


「まったく、人形がライバルなんて認めたくないですネェ…でも、最後に勝つのは私デス」

エミリーと楽しげに遊ぶ見つつ
ザクスの言葉は誰に聞こえることもなくこぼれて消えた




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