残念ながら(甘)


※姫視点





人間が部屋に入るには
ドアから入ってくる
それが当たり前だ

テーブルの下からだとか
クローゼットの中からだとか
常識を覆す様な不法侵入じみたことはよくないと思う


私の悩みの種は
常識を覆して、絶対に有り得ないところから姿を現す
いつもヘラヘラとしていて
肩にはよくわからないエミリーという人形を乗っけている
ザークシーズ=ブレイクというレインズワース家の使用人のことだ


ある日私が服を着替えるためにクローゼットを開けると
あろうことか中にはあの男
ブレイクがいつものヘラヘラした笑みを浮かべて立っていたのだ

「やぁ姫、こんにち…」

─パタン


それから怖くてクローゼットを開けられなくなったのは言うまでもない

だが、慣れとは恐いもので
同じことが何度も続くと何も感じなくなるらしい


今だってそうだ
先程机の下からブレイクは出てきた


あの笑みは何を考えているかわからなくて、掴みどころが全くない
“張り付けた様な”という言葉がピッタリな笑顔だ

その笑顔で今
目の前で私のことを見ている

なんでこうも頻繁に私の部屋に現れるのか


本当に

「食えない奴…」


─悔しいけど、認めたくないけど


「誰のことデスカ?」

「あなたのことですよ、ザークシーズ=ブレイク」





─残念ながらベタ惚れ



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