想っているから思うのです(切/悲)


※姫視点






思った
思ったの
私はあなたを想ってないの
想っちゃいけないの


「私はあなたのことが大嫌い」

思ったら口から出ていた
涙が出そうだった


「ねぇ、聞いてるの?一条拓麻」

問いかける
何故か泣きたい
そんなキモチ
そんなふうに思った

「私は、あなたのことが嫌い」


嗚呼、胸が潰れそう
吐き気がする
眩暈もする

なんて馬鹿なことをしているのか
と全身の細胞が訴えかけてくる
だけど私の想いは止まらない

喉の奥から吐き出される
黒い言葉という塊は
とどまることを知らない
とどめては、いけない
吐き続けなくてはならない

そして、その黒い言葉は
誰かを傷つける


「姫……」

いやだ
本当はそんな表情を
させたいわけではないのに…
泣きたくなる
泣き喚きたくなる

もしかしたら
もう泣いているのかもしれない
表情ではない何処かは
もう泣いているのかもしれない

「拓麻…」


ここから消えてしまいたい…─

この気持ちをどうにかしてほしかった
我が儘だとは分かっている
一方的に暴走しているのも知っている

けれど、私はもう楽になりたいんだ
きっとあなたに全て預けて
楽になりたいんだ

あなたを想うと苦しいの
悲しいの、切ないの、痛いの


「ねぇ、姫…僕は、姫のことが…」


一度俯いて、次に顔を上げた時
あなたは声を絞り出して
私の名前を呼んでくれた

悲痛な叫び声を聞いてるみたい
耳鳴りがうるさい

聞きたくない
何も、聞きたくない
いいえ、嘘、
本当は全部聴きたい
あなたが紡ぐ音は何でも聴きたい


自身の立ち位置さえつかめずに
フラフラとあなたに
寄りかかってしまう
そんなんじゃ、ダメなのに

心音が聞こえるか聞こえないかの
この距離で
お互い思うことはたぶん一緒

一緒なの
お互いに立場を理解しているから


早く、早く
私の心を受け取って…


「僕は…姫のことが、きらい…きらいだよ」


雨が降ったのかしら
心臓の鼓動が速くなり
胸の奥が痛くなり
喉が枯れてひきつっている感覚
頭が割れるように、痛い


傷ついたのは私
傷つけたのはあなた
だけど
傷つけているのは私
傷ついているのはあなた

あなたは優しいから
言ってくれた
その言葉を言ってくれた


でも何故だろう
さっきよりも
辛くて悲しくて切なくて
苦しくて痛いの


お互いに涙は流さない
理解しているから


私たちの涙の代わりに
世界中に雨が降ればいいと思った



想っているから思うのです
私たちは一緒にいてはいけないと


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