一方通行(切/悲)


※拓麻視点
 拓麻→姫→枢→優姫






寮への帰り道
僕の隣を歩いている姫が呟いた


「枢、今日も優姫ちゃんと一緒にいたね…」


影を落とした顔
切なそうな声


─僕なら絶対にそんな顔させないのに


「姫はよく枢のこと見てるね」


にっこり笑って顔を覗き込めば
切なそうに微笑んで

「そうかしら?」

と返す姫


姫は枢のことが好き
でも枢には優姫ちゃんがいる

諦めちゃえばいいのに
なんて言ったら嫌われちゃうかな?


姫の目はいつも枢の姿を追っている
昨日も、今日も、明日も、明後日も

そんな姫の姿を追っているのは僕


枢の目が姫に向くことは
たぶん、きっと、ない

それでも追いかけ続ける姫を
僕も追いかけて

そうして 姫は傷付くんだ


寮へ着きそれぞれの部屋に帰っていく

僕も自室へ行って
着替えて 寝ようとベッドに入った

だけどなかなか眠れなくて
太陽が顔を出した頃
気分転換にと寮をでた
枢に見つかったら怒られるだろうけど


日陰を作っている木の下に姫の姿が見えた

─泣いてる


「姫…」


声を掛ければピクリと肩を揺らし
その目に僕を映す


「た、くま…どうしてここに…?」

「ちょっと眠れなくてね、姫は?」

「私もそんな感じ」


泣いていたなんて思えないくらい
ニッコリ笑う姫は
どう見ても無理をしている


「…泣いていたの?」


僅かに姫の目が見開かれる
それでも誤魔化せないと分かったのか
小さく頷いた


「やっぱり枢と優姫ちゃんのこと?」


姫が手を握り締めるのが分かった

─僕なら絶対にそんな顔させないのに


姫の姿があまりにも痛々しくて
思わず抱き締めた


「っ…拓麻?」

「ねぇ姫、僕じゃ駄目かな?僕なら絶対に姫を不安にさせないから…だから…」

「…ありがとう」


姫はそう言って
顔を上げ、切なく笑った



伝えた想いは所詮一方通行
ただ追いかけるだけ
それでも、いつかは
振り向いてほしくて



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