それならいっそ(切/悲)


※純血ヒロイン





思ったの
生き物は何故生まれ、
何故死んでいくのか


「…姫、考え事?」

窓際の椅子に座り闇を見ていた私に話しかけてきた枢をガラス越しに見る


「ちょっとね…‥ねえ、枢…生き物は何のために生まれて死んでいくと思う?」

「…急にどうしたの?」

枢は心配そうに私の傍に近寄って言った


「別に急じゃないわ。昔から、ずっとずっと昔から思っていたの…何故、生まれて、何故、死んでいくのか…枢はどう思う?」

「…」

枢は目を伏せて何も言わなかった


「私ね、思ったの。生き物は死ぬために生まれてきたんじゃないか、って」

「死ぬために…?」

「そう、死ぬために。…私ね、死ぬために生まれてきたのなら、それならいっそ──────」

ポツリと呟いた言葉

同時に背中にかかる重みと彼の香り

─あぁ、抱き締められたのか



「姫…そんなこと、言わないで…君を一人になんてしないから、だから…っ」

「枢…」

私を抱き締める腕に力がこもる
まるで どこにも行かないで って言っているみたいで
思わず私も枢の腕を抱き締め返した


「ごめんね、枢…」

私のあの一言があなたを傷付けた


腕を解いて額をくっつけて話し出す枢

「僕はずっと姫の傍に隣にいるから…だからもう二度とあんなこと言わないで…お願いだから」

「ごめんね、」

額をくっつけたまま手を握ればしっかりと握り返してくれる枢


ごめんね、枢
でも、この思いは純潔種特有のものでしょう?
人よりも、他の吸血鬼よりも
誰よりも長く生きる純血種、
だからこそ感じるものだって
あなたにも分かるでしょう…?


***


大切な人がひとり、
またひとりと死んで
最後は自分だけになる
そんな事が起こるのは、
他より優れた純血種の運命
むしろ罰なのかもしれない
それでも、だからこそ、
姫の口から言って欲しくなかった



死ぬために生まれてきたのなら
それならいっそ


生まれてこなければよかったのに



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