そこに在るということ(甘)
※臨也視点 七夕SS
先刻からずっと窓にへばりついている姫
「今日は七夕ですね」
なんて言う姫の声色は暗かった
何故なら今夜は雨が降っているから
そして俺は先刻からずっと窓にへばりついている姫のせいで若干不機嫌
「織姫と彦星、ちゃんと逢えてるのかな…?どう思いますか臨也さん」
顔を向けずに問いかけられ
ついつい意地悪が顔を出す
「さあね、そもそも仕事をサボって遊んでたんだから逢えなくても自業自得だよね」
「そりゃ…そうですけど…」
はぁ、と大きな溜め息をついた姫
溜め息をつきたいのはこっちだよ
「ねえ姫、織姫が彦星と逢えたかどうかなんて、そんなことどうでもいいでしょ」
「“そんなこと”じゃないです!これは重大なことなんですから!」
少し大きな声を出して反論してくる姿が可愛くて緩みかけた頬をしっかりと引き締める
「何で?」
俺が問いかければ
「だって…」
急にしおらしい声を出して俯いてしまった
「だって、何?」
「…だって、例え自業自得だったとしても、それは好きで好きで仕方がなかったからで…好き同士なのに1年に1回しか逢えないなんて寂しいじゃないですか」
ポツリと呟く様に話す姫
─あぁ、もう…
俺は思わず姫を抱き締めた
「ちょ、臨也さん…?」
「好きな子に他のことばっかり気にされてたら寂しいんだけどなぁ」
ぎゅうっと腕に力をこめれば
姫は すみません、と苦笑した
「でも、“そんなこと”って言ったのは許せないです」
と口を尖らせた
ごめんごめん と軽く流せばムッとしつつも許してくれた様だった
「…織姫と彦星は年に一度しか一緒にいられなくても気持ちはいっつも一緒なんじゃないかな?」
「…そうですね」
「一緒にいても気持ちが留守の方が寂しいよね」
「まだ言いますか…」
アハハ と笑えば笑い返してくれる
「俺達は織姫でも彦星でもないから“そんなこと”心配しなくてもいいね」
「だから、“そんなこと”って言わないで下さい!」
─そこに在るということ
こんな日々に感謝を
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