笑顔の裏側(切)


※姫→みけちよ 姫視点
 special thanks:火乃宮淡朱 様






「姫さんはいつも笑顔が素敵ですね。私は姫さんの笑顔、好きですよ」

とても嬉しくて
これからも笑顔でいようって
双熾さんの心のどこかに
ワタシ という存在がいられる様に
笑顔でいようって
そう、思ったの


「なんだか姫ちゃん最近ニコニコだねぇー」


ラウンジで一人紅茶を飲んでいたら
残夏に声をかけられた


「そうかなぁー」

「すっごくニコニコしてるよー?…でもさ、無理はよくないからね?」

「…っ別に、無理なんてしてないよ?何で無理して笑う必要があるの?」


声が震えてはいないだろうか
視線が揺れてはいないだろうか


「そーなの?…まぁ、程々にねー?さーて、ラスカル探しに行かなくちゃ」


そう言ってヒラヒラと手を振り
去っていった残夏に
私はただただ、
唇を噛み締めるしかできなかった

何もかも見透かした様な言い方
どうやら残夏には完璧にバレているらしい


それからしばらくして、
また誰かがラウンジに入ってきた

双熾さんと凛々蝶ちゃんだ


─ズキン

心臓が痛い
それでも笑顔で挨拶をする


「おかえりなさい凛々蝶ちゃん、双熾さん」

「ふっ、ただいま、とでも言っておこうかな」

「ただいま戻りました、姫さん」


凛々蝶ちゃんの後ろに
ピッタリとくっついて歩く双熾さん

凛々蝶ちゃんのSSだから当たり前だ
だけど、それを見ていると
どうも心臓が痛くなる

それでも笑顔を向ける
双熾さんが笑顔が好きだって
言ってくれたから


双熾さんが
凛々蝶様、凛々蝶様、
と呼ぶ声がする
もう双熾さんの視界に
私はいない


それでも笑顔を貼り付けて
大丈夫って自分に言い聞かせて


「そろそろ部屋に戻りますね」

笑顔で二人に別れを告げて
ラウンジを後にする
一人部屋に向かう

私が独りきりの部屋で涙しても
あなたは気付かないでしょうね
あなたには凛々蝶ちゃんしか
映ってないもの

それでも笑顔を張り付けるの
あなたの前では笑っていたいから


((無理して笑う必要があるの?))


さっきの自分の言葉が聞こえる

無理してるんじゃないよ
ホントに大丈夫なんだよ
だけどホントのホントは
誰にも言えないの
笑顔でいなきゃいけないの
ただの強がりだよ
それでも、今更戻れないの
笑顔が好きだって言ってくれた
双熾さんの前では笑っていたいの
嘲笑われたっていい
馬鹿にされたっていい


双熾さんにとってはお世辞に過ぎない
ただの言葉だったかもしれないけど
私にとっては大切だから


だから、
大丈夫って自分に言い聞かせて
泣くことすらままならない
弱い私はどこかにしまい込んで


また、笑うの


たとえあなたの心に
はじめから ワタシ が存在するスペースがなかったとしても
存在を認めて欲しかったワタシを
否定したくないから

また、笑う、の



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