単純で複雑な理由(切/甘)


※残夏視点







「姫たーん」

「なぁにー残夏たーん?」

「んー?何でもない☆」

「…じゃあ呼ばないでよ」

「いいじゃん別に…姫たんのケチ〜」

「はいはい、ケチですよーっだ」


僕が君の名前を必要以上に呼ぶ
その理由を知ったら
君はどう思うのかな…?


「ねーねー姫たん」

「…どうせまた何でもないんでしょ?」

「ひっどいなぁ…残夏たん悲しいっ」

「悲しいなら悲しそうな顔しなさいよ」

「はいはーい」

「…思いっきり笑ってるじゃん」


ここは冗談でも
悲しそうな顔を
するべきかもしれない
だけど、それはしない
その理由は単純で複雑

僕が悲しんだ顔をしないのは
君の中にいる僕という存在が
いつも笑顔でいてほしいから
だから、どんなに悲しくても
辛くても、苦しくても
絶対に顔には出さない
出したくない


「そんなことよりも、姫たん、実は言いたいことがあるんだけど」

「え、何?急に真面目な話…?もしかして、私の未来が見えたとか?うわ…どうしよう」

「違う違う、未来とかじゃなくて」

「そっか…なんか安心した…で、何?」

「姫たん、好きだったよ」

「は?」


君の未来なんて見たくない
その理由は単純で複雑
だって未来の君の隣にいるのは
僕じゃないから


「だーかーら、好きだったよ」

「いや、何で過去形?」

「何でだろーね☆」


過去形にした理由は単純で複雑
現在進行形で伝えるには
重い話だから
この想いを伝えたことで
君の未来の幸せが
崩れてしまうかもしれない
そんなことはできなくて
だけど、どうしても伝えたくて
それで過去形にしたんだ


「いや、だから…あのさぁ…」

「姫たん、姫たん」

「…何?」

「何でもない☆」


僕が君の名前を呼ぶ理由

それは単純で複雑
今、君の名前をび続けて
近い未来、僕がいなくなっても
君が寂しくないように
ずっと君の中に
残っていられるように

そう願っているから



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