永遠なんて、(切/甘)


※残夏視点






ふ、と思ったんだ


「ねぇ、姫〜」

「んー?」

「これから先、もしも僕が先に死んだとしても、姫は姫を大切にしてくれるヒトを見つけて幸せになってね?」

「…はっ!?残夏、何言って…」

「いいから。約束してよ」

「…いや」


あらあら…

「ほーら、いいこいいこ」

そう言って姫の頭を撫でると、
彼女は少しむっとしたような顔をして、それから目を伏せて言った。

「私を幸せにしてくれるのは残夏でしょう?私は“今”が続けばそれだけで充分幸せなんだよ?」


そう、それは僕だって同じこと。

この日々がずっと続けばどんなにいいか…

「姫、僕もね、ずっと姫と一緒にいて、姫を幸せにしてあげたいよ?でも…僕に残された時間はきっとあと僅かだからさ」

「それなら残夏が死ぬ時に私も死ぬ!残夏を忘れて他の人と幸せになるなんてできないよ。…ねぇ、お願い…お願いだから、私を、一人にしないで…」


─ぽたぽた

姫の涙が彼女の膝を濡らす。


「姫、」

「……」

「僕が言いたいのはね、もしも僕が死んだ後に姫を大切にしてくれる人が現れて、姫もその人を好きになったとしたら、死んでいる僕に罪悪感を感じたりせずに幸せになって欲しいってことなんだよ」

「…残夏以外の人を好きになったりしないもん」


思わず苦笑した
姫は、精神的にはもう大人といっていい年頃だと思っていたけれど、どうやらまだまだ子どもの様だ

─こんなに愛されてるなんて
 僕は幸せものだね


「そうだね…まぁ、僕も姫に幸せになって欲しいとはいっても、他の男に姫を取られるのはぶっちゃけイヤだな〜…残夏たん悲しくなっちゃう」

「……うん」

「だからさ、命が続く限りは精一杯生きて、姫を幸せにするから」

「…うん」

「ただ、覚えておいてね。僕を一番に愛してくれるのは、僕が生きているこの瞬間だけでいから、永遠に、なんて言わないから」

「うん…」


当然、いつか僕にも死が訪れる
それは恐らく、いや、確実に
姫より早くやってくる


永遠なんて、いらない


ただ、
僕が生きているこの瞬間は
姫のことを精一杯愛そう と
そう、思った


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