ボクのチカラ(切/悲)
※残夏視点
愛するものを護りたい
僕のこの力に、願った
僕と姫はいつも一緒にいた
気が付いたらそこにいる
そんな存在だった
百目の先祖返りである僕は
見たくないものまで見えてしまったりもする
上辺だけの言葉だってたくさん知っている
だけど姫は違った
言葉に血が通っている
上辺だけだと思っていた僕に温もりと光をくれた
とっても大切な存在
姫は戦闘に長けた先祖返りだ
だから何かあれば直ぐに前に出て戦う
いつだったか、
何故そんなに頑張って戦うのか、と聞いたことがある
─大切な人を護りたいから
だから私は戦うの
姫はそう言っていた
それからしばらくしてだった
姫が大怪我をして病院に担ぎ込まれたのは
外の仕事ですっかり遅くなってしまい、
急いで帰ろうとしていた矢先に
妖怪にやられたそうだった
傷は深かったけれど、たまたま通りかかった人に発見され病院に運ばれた
発見されていなかったらどうなっていたか…
恐くて想像すらしたくない
そして今
その事件から1ヶ月が経とうとしている
しかし、まだ姫は目を醒まさない
姫と僕以外には誰もいない病室
「いつになったら起きてくれるのかなぁ〜…ねぇ、姫…」
そっと頬に触れる
僅かに上下する胸と
心電図の機械的な音だけが
姫が生きているという証だった
─もしもあの日、
姫の危険が察知できていたら
何度思ったことか
─もしも、僕に戦う力があれば
何度願ったことか
愛するものを護れなかった
僕ののこの力を、呪った
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