繋いだ手(甘)


※残夏視点





初めて姫の手と手を繋いだとき
それはいつのことだったか
忘れてしまうくらい
遠い遠い昔の話

でも、その時のことだけは
無駄によく覚えてる

姫の手は
酷くあたたかかった

繋いだその手を
二度と離したくない
そう思った


─…‥


『残夏?』

マンションの屋上に備え付けてある椅子に一緒に座っていた姫は心配そうに僕の顔を覗き込んだ

「ん〜?なぁに?」

繋いだままの手に僅かに力を込めれば少し表情を和らげた

『なんだかボーッとしてたから…どうしたのかなぁって、何か考え事?』

「うーん、まあそんなところかな?」

ニッコリ笑ってかえせば
何それ と若干口を尖らせる姫

姫の表情はコロコロ変わって
見ていて楽しい

だからちょっと遊びたくなった


「昔 手を繋いだ子の事を思い出してたんだよ〜」

あながち間違ってはいない答え
それを聞いた姫は、また表情を変える

『…ふーん』

ほら、顔に出てるよ


「ヤキモチ?」

『なっ…!?バカっ!ち、違うから!』


慌てて手を離そうとする姫だけど僕が離すわけない


「ねえ姫、姫の手はあったかいね」

ぎゅうっ と握り締めれば
そっぽを向きつつも握りかえしてくれる

「昔も今も、繋いだ手を離したくないと思うのは姫だけだよ。…もう二度と離さない」

そっと伝えれば僕の肩におずおずと寄りかかる姫

『私も、そんな気がする…たぶん』




─繋いだ手は 今も昔も
 酷くあたたかかった
 もう二度と離さない
 離したくない
 離れない



(ねえ、昔手を繋いだ子って誰?)
(ん〜?姫が良く知ってる子だよ)
(…浮気?)
(まっさかー)

((今も昔も君だけだよ))



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