好きだった(切?/甘?)


※不知火視点






幸せそうに笑う姫
その隣にはあの風間

─幸せそうだな、本当に


新選組がなくなって
行き場のなくなった姫
彼女を連れてきたのは風間だ

姫とてただの人間ではない
微弱ながら鬼の血をひく
だからこそ風間は連れてきた

はじめこそ里に慣れず
家にいることが多かった
無理もない、
周りは皆知らない奴等だ
そんな姫の様子を見に
俺はよく風間の家に行った
俺が家に行ってやれば
姫は嬉しそうな顔をした
その顔が見たくて、
ほとんど毎日風間の家に通った

俺の中で“ただの女鬼”では
なくなってきたのかもしれない


そう自覚しはじめた頃
姫は家にいないことが増えた
風間と一緒に家の外に出ていったり
里の奴等と話をすることが
多くなったからだ

風間のことだ、
きっと気まぐれで構ってるだけだろう
いくら女鬼といえども
姫と風間とでは
“血”に差がありすぎる

鬼であることを誇りにしている風間だ
ならば、姫よりも
血筋のいい女鬼を探すだろう
そう思っていたのに


「近々祝言をあげる」

「…は?」

「二度は言わん」


祝言…風間と姫が、結婚
衝撃的だった
それから数日経ったある日
俺は姫と久々に会った


「あ、不知火さん!お久しぶりです」

「…おー、姫か」


里の中をふらついていた俺に
相変わらずの笑顔で駆け寄ってきた姫
少し前まではずっと家にいたのにな


「お元気でしたか?」

「まぁな。…そういえば、結婚すんだってな」

「はいっ」

「幸せか?」

「はい!」

「そうか…」


幸せそうな笑顔に
俺は何も言えなかった


「まぁ、あれだ…幸せになれよ」

「はいっ!不知火さんも幸せになって下さいね?」

「っ…おう!風間になんかされたら言えよ?一発かましてやっからよぉ!」

「もうっ不知火さんったら!」



─好きだった
 だからこれからは
 幸せに向かって歩き出した
 君の力になるよ



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