一番の薬(甘)


※沖田視点






嗚呼、今日もこの時間が来てしまった


「沖田さーん、お薬の時間ですよー」


僕は薬が嫌いだ
苦いし不味いし美味しくないから

良薬口に苦し、だっけ?
姫ちゃんも言ってたな
でも、嫌いなものは嫌い

昨日は調子が良かったから、
薬の時間になる前に
こっそり部屋を脱け出して逃げてみた
結局捕まったんだけどね…

だけど、今日は
あんまり調子が良くないから
姫ちゃんと追いかけっこなんて
できそうにない

と、言うわけで
寝たフリをすることにした


「お薬ですよー、って…沖田さん?」

全身の力を抜いて

「…寝てます?」

起きている事を悟られない様に


「………はぁ」

姫ちゃんの溜め息が聞こえた
諦めたのかな…?

「残念ですね、せっかく局長が別室で待って下さってるのに…」

次からは寝たフリしよう
って…え?近藤さん…!?


「これはお引き取りしてもらうしか「姫ちゃん!今すぐ案内して!」

がばりと起き上がれば
目を丸くする姫ちゃん

「ほーらー!姫ちゃんはやくはやく!」


…あれ?
心なしか姫ちゃんの笑顔が
いつもよりも黒い気がする
これは……


「やっぱり寝たフリしてたんですね」

…ハメられた


「はいはい、局長はいらっしゃいませんけどお薬はいらっしゃいますからねー」

「ちょっと姫ちゃん、これはさすがに酷くない?」

「酷くありません。さあさあ、はやく飲んで下さい」


有無を言わさないこの威圧感
渋々薬と水を受け取り
口に流し込む


「…おいしくない」

「良薬口に苦し、ですから」

でたよ、その台詞
もう耳にタコができそうなくらい聞いている

「はいはい、なんなら姫ちゃんがおいしい薬作ってよ」

文句のつもりで言ったのに

「薬は苦いから効くんですよ」

ニッコリ笑顔で返されてしまった
さっきとは違う
綺麗な笑顔


僕もつられて頬がゆるんだ



─ 一番の薬は
  君の笑顔なのかもしれない



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