あまりにも単純すぎて(ギャグ?/甘?)
※市丸視点
何というか
「姫ちゃんおる?」
彼女を見ると
「は、はい。ここに」
どうしても
「これ、十番隊長はんに届けてきてくれへん?」
「承知致しました」
いじめたくなる
十番隊長はんのところに
お使いに行かせてから、
もう一刻は経っただろうか
未だ隊首室に報告しにこない
姫ちゃん…
ということは、まだお使い中か…
クスクスクス
さっきから笑いが止まらない
それは楽しくて仕方がないから
筆を持ちながら笑っていると
イヅルの溜め息が聞こえた
何故溜め息をついたかなんて
大方予想はつくが、
とりあえず聞いてみることにした
「なんやイヅル」
「い、いえ…」
「はっきり言い」
「…その、わざわざ姫さんに期限切れの書類を、よりによって日番谷隊長のところへ届けさせるのは…どうかと、思いまして…」
ああ、やっぱりそれか
「そないなことか…別にえぇんよ」
「しかし…」
─バタバタバタ
慌ただしい足音
良く知る霊圧
どうやら姫ちゃんが
帰って来たようだ
「失礼します!市丸隊長っ!あの書類の期限切れてましたよ!?おかげで日番谷隊長に長々と怒られちゃったじゃないですか!」
ノックもそこそこに入室して
いきなり僕に非難の声を浴びせる姫ちゃん
─本当にいじめたくなる
「なぁ姫ちゃん、僕まだ入室許可してへんのやけど」
笑顔でそう告げれば
一気に顔を青くさせる姫ちゃん
「え、あっ…ししし失礼しました!!」
そして物凄い勢いで頭を下げる
そんな姫ちゃんの姿を見て
何とも言えない満足感が沸き上がる
「入室許可無しに隊首室に入室してきはった姫ちゃんには、お仕置きが必要なんかなぁ…?」
「ひぃぃっ!!すみませんすみませんすみませんっ」
「姫ちゃん…謝るんで済むんやったら、警察も死神も要らへんよ?」
─あまりにも単純すぎて
気付かなかった
これが恋だなんて
「好きな子ほどいじめたくなる、か…」イヅルのつぶやきは
姫の悲鳴にも近い
謝罪の言葉に書き消され
誰にも届くことはなかった
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