紅い海岸線(切/悲?/死?)
※姫視点
参考にさせて頂きました
上田哲郎/ひとり十字軍/海岸線
どこまでも真っ白な世界
だいぶ飽きてきた気もする
自分からついてきた訳ではない
彼に連れてこられた と言う方が正しいだろう
でも私は彼を拒まなかった
それはきっと私が彼のことが好きだったから
真っ白な世界を眺めていた私の後ろから彼の気配が近づいてきた
『海が見たいの』
振り返り、告げる
真っ白な世界に溶け込むような白を纏った彼に
勿論こんな真っ白な世界には
海なんてあるはずもなくて
遠回しに現世に行きたいと言ってみた
「…ええよ、ほな行こか」
許可するあなた
最近はまともに会話をしなくなった
彼も忙しいらしく、すれ違いが多い
口を開けば出てくるのは悪態ばかり
現世への道も会話はなかった
岩場の海岸線についた時
現世は夕方だった
紅い夕陽がやけに目につく
荒々しい紅い海岸線
『まるで私たちみたいね』
視線は紅く染まる海に向いたまま
淡々と音を発するだけの口
『泳ぐたびに傷付けて、風が吹くたびに傷付いて…幸福をつかもうとすると闇に飲まれる』「そうして、時間の波に溺れて死んでしまうんやね」
お互いに目を合わせることはしない
視線は紅く染まる海に向いたまま
『要らなくなったならいつでも捨てて、ギンが終わらせてね』
言い切る前に彼の腕が私を捕らえる
「要らなくなんかならへんよ」
切なそうな音がする
「寂しい思いさせてたみたいやね…ごめんな」
私を抱き締めている腕に力がこもる
心地よい暖かさ
私の視線は紅く染まる海に向いたまま
紅い夕陽がやけに目につく
「愛してる、せやから…」
─そしてあなたは私を突き落とす
愛という名の海に
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