あの日あの時あの場所で(切/悲/血)
※姫視点
あの日あの時あの場所で
あなたに出会っていなければ
私たちの未来は変わっていたのでしょうか
***
50年程前
上弦の月が輝く夜に
おびただしい量の鮮血が散る
流魂街のはずれで
あなたに出会いました
あなたは虚退治に来ていました
そして、その場に座り込んでいた私に言いました
「君には霊力があるみたいだね。どうだい、僕と一緒に来ないかい?」
僅かに微笑んで私に手を差しのべたあなた
刀を振るい虚を散らせていくあなたを一目見たとき
ほんのりと暗く黒い何かを感じ
一瞬で引き込まれました
それから私は死神になり
あなたの下につきました
『あなたの為にできることがあるのなら、どんなことでも致します』
私はあなたに忠誠を誓いました
***
それから50年程が経ちました
『何故ですか、藍染隊長…』
「君に話したところで、到底理解できないだろう」
あなたは謀反を起こしました
「ところで姫、君も私達と一緒に来ないかい?」
それは余りにも唐突で
余りにも甘い誘いでした
私があなたに出会った時と同じ様に
僅かに微笑んで私に手を差しのべて
『…連れていって、下さるのですか?』
「君は特別だからね」
ああ、やはりあなたは私の…
あなたの手に私のそれを重ねた
その瞬間
─ドスッ
「特別だからここで消えてもらうよ」
─ぱたぱたぱた
あなたの刀が私の腹に刺さり
地面には紅い雫と透明な雫とが落ち
混ざり 吸い込まれて行きました
『何故、です…か…』
「私は私に弱点を残したくないのだよ」
─ずるり
あの時と同じ鮮血の中
刀を引き抜くあなた
そのあなたの目がほんのりと暗く黒いモノを映していました
ああ、やはりあなたは…
─ぷつん
私の意識は途切れました
あの日あの時あの場所と
同じ誘いに乗った私はバカですか?
あの日あの時あの場所で
あなたに誘われていなければ、
その手を取っていなければ
なんて 後悔はしていません
大好きでしたから…─
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