ここにいる意味(切?/悲?/死?)


※過去捏造あり






一面の白の世界で市丸は呟いた

「姫がおらへん」

理由は簡単
ここにはいないから
正確には
この世界にはいないから


昔、まだ市丸が五番隊の三席だった頃
上位席官であり、市丸が秘かに恋心を抱いていた人物─姫は虚討伐の最中に虚の攻撃を受けてしまい
それが致命傷となり殉職した

まだ若く、今後を期待されていた人材だった


市丸が想いを打ち明けることもなく
彼女はあっさりと逝ってしまった


死因は虚の攻撃による傷だったが
それは明らかな伝達ミスが引き起こしたと言えよう

伝達での虚の出現予測は
2〜3体だった
さほど多くないということから
少人数で虚討伐に向かった姫
しかし、いざ行ってみると
虚は倍以上いた

救援を要求したが
それにも伝達ミスがあり
救援の到着はかなり遅れた

その間に姫は死んだ
いや、殺されたのだ、魂尸堺に

自身も救援として向かったが
そこで見たのは
変わり果てた姫の姿だった


「っなんや、嫌なこと思い出してしもうたわ…」

一面の白の世界を見つめていた市丸は軽く頭を振り、回想を半ば無理矢理終えた

しかし、頭の中を占めるのは
姫のこと、魂尸堺のこと、
あの事件のこと


姫がいた頃は楽しかった魂尸堺
だが、あの事件以来
魂尸堺に嫌悪感を抱いた

「…もしもまだ姫が生きとったら、僕は離反なんてできんかったやろな」

表情のない声で紡がれた言葉は
誰に届くこともなく
白の世界に溶けて消える


「もう何十年と経つんに…かなわんなぁ」

市丸の中の彼女への想い、
魂尸堺への想いは
消えるどころか増すばかり


「市丸様」

名前を呼ばれ我にかえる

「何?ウルキオラくん」

「藍染様がお呼びです」

藍染─離反の首謀者であり、
天に立とうとする男
彼について行けば
魂尸堺を壊すことも叶うだろう
そう思ってここまでやってきた

「さよか…ほな、今行きますわ」



君のいない世界に
意味はないから
君を殺した世界は
壊れるべきだから
だから僕はここにいる


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