スピリチュアルライフ (1/7)
あー…、肩が重い、腰が痛い。
あの電柱を過ぎた辺りから地球の引力が狂ったんじゃないかってぐらい凄まじい重力が全身に圧し掛かってきて歩くだけで息が切れる。
いくら頻繁に起こる事とはいえ馴れるもんじゃないし何の罪もないオレがこんな理不尽な体質だってことに飽きることなく毎度腹が立つ。
「どなたか存じませんけどねぇ、オレは残業して疲れてんだバカ野郎…あ?もしかしてバカ女?」
返事なんて聞こえやしないけど愚痴らないとやってられない。
どうか若くて巨乳でありますように、なんてせめてもの救いを願いながらセクハラ紛いの一人言を吐いて歩く。
端から見たら怪しい人だと思われるけど構ってられるか、背中の重みと戦うには強気でいなきゃダメなんだ。
想像してみろ、おんぶしてる若くて巨乳の美女をセクハラ発言で追い詰めるドSなオレ、弱気なヤツにできる所業じゃない。
「これ以上オレに汚される前に消えな、成仏しろよ。」
かっこよく言い放ってみたがズッシリ重くなった背中がセクハラ発言で軽くなったことなんて一度もない。
さて、どうしようか。
先祖代々幽霊が見えない霊媒体質、そんな家系だからピンチを脱する秘策やコネは腐るほど持ってるけど疲れてもう歩きたくない、携帯で助けを求めるのもめんどくさい。
これはよくない兆候だ、気力を無くすと体を乗っ取られる。
それで散々辛い思いしてきたんだ、ここで負けるわけにはいかない…んだけどマジで今回はムリっぽい、残業続きだったからなぁ、仕事のストレスで元々気力なんか残ってなかったし。
一歩も足が動かなくなったオレは立ち止まって地面を見ながら今回はどんな酷い目に合うんだろうかと溜息を吐いた。
今のオレにできることといえば意識が戻った時に留置所や病院にいませんようにとピンチのオレを救ってはくれない神様に控えめなお願いをすることだけだ。
「大丈夫ですか?」
「…ぅ、…う?」
おいおい勘弁してくれよ、男は寄ってくるな厄介なことになったらどうすんだバカヤロー。
親切なのは分かりますけど今は放っておいて下さい!
ホントにありがた迷惑なんで!
「歩けますか?」
歩くどころか首持ち上げて顔を見ることすら困難なんですけど。
ついでに言うと喋れません、だから返事もできないし放っとけと恩を仇で返すこともできません。
できないはずなんだけど…、
『す、すいません、き、気分が、が、わ、悪くて、』
喋ったぁ!!
オレじゃないけど、オレの意思でもないけどね!
いつもなら意識が途切れて目が覚めたら何も覚えてないってのが恒例なんだけど、こんなこと初めてだ。
「歩けますか?」
コクリと頷いて男に促されるまま足が勝手に歩いていく、今まで動かない足に動いてくれと願ったことはあったけど動くなと願ったのも今日が初めてだ。
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