温かいお食事処
深夜1時過過ぎ・・・・
残業帰りの土方 十四郎は、軽く伸びをしながらもいつもの道を帰っているつもりだった・・・でも数日の激務で疲れ果てた体と睡眠不足の所為で方向感覚を鈍っていたのか、いつもの道と違うと気付く。そして呟く。
「やべぇ道間違えた・・・?」
周りを見渡すと見たこの無い建物が目に入り道を間違えた事に改めて気付いた。そしてもと来た道に戻ろうと踵すを返そうとした時数メートル先に赤い行燈がぶら下がっていてその行燈には“居酒屋お食事処”とかいてあった。
「こんな所に居酒屋なんかあったのか・。」
そしてそのまま誘われるように暖簾をくぐった・・・・。
「いらっしゃ〜い!」
間延びした声に出迎えられ土方は顔を上げ店の中を見渡す。人の気配がない。もしかして・・・と思い
「まだ大丈夫か?」
カウンターの中にいる店主らしき人物に聞くと
「構わねぇよ、でも閉店も近いしあんま食材残ってないから出来ないものも多いけどそれでいいならどうぞ?」
砕けたしゃべり方で土方は肩の力を抜く。
「構わねぇ。」
そう土方が答えると
「そ?じゃあどうぞ。」
洗い物の後なのかタオルで手を拭いて店の中をさす。土方が座るのを見届けて
「お客さんうちは初めて?」
そう聞かれて頷く土方。店主は
「うちはメニュー表がないからお客さんの今食べたいもの言って、食材がある限り俺が希望通りに作るから。」
「へぇ。なかなか面白い事考えるじゃねぇーか。」
「それでお兄さん何がいい?」
「特にこれっといてねぇーからなんでもいい。でもあえていうならマヨネーズにあうおかずがいいなぁ。」
いつも隠し持ってるマヨネーズを取り出し机に置くと店主はキョトンとして笑いだす。
「ぶっはっ!そんな業務用持ち歩く人初めて見たぁぁ!ぎゃははは!」
腹を抱えて笑う店主。土方は
「好きなんだからしょうがねぇだろ!」
そう反論するとお腹をかかえながら店主は
「ゴメンゴメン!じゃあ聞くけどお兄さんは今ガッツリいきた派?さっぱりいきたい派?」
そう聞いてくる、土方は
「そうだな、夜も遅いし数日の激務で疲れてるから今ガッツリしたものは食べたくねぇーな。さっぱりがいい。」
「了解!じゃあそのマヨネーズ貸して。」
手を差し出されるまま渡す土方。店主は
「ちょっと待ってろ、さっぱりだけど精力のつくもの作ってやる。」
そう言って奥に入って行った。それからしばらくして
「お待たせぇ〜!」
お盆に作ったものをのせて厨房の方から戻って来て土方の前に並べる。見事に並んだおかずを見て条件反射でお腹が鳴ってしまう。それを聞いて店主がクスッと笑って
「疲れてても腹は減るからな、さっさと食えよ。」
笑顔で言われる。そして
「これ返しとくな。」
左斜め前にマヨネーズを置く。
土方は両手を合わせて合唱して箸を持っておかずに手をのばし・・・一口パクッ・・・
「うめぇ。」
本当に旨かった。自然と言葉が出てきた。パクパクと箸が進む姿を見ながら店主は
「そう?口にあってよかった。」
洗い物をしながら笑顔で笑いかける。土方はその笑顔を見て問いかける。
「あんた名前は?」
「坂田 銀時、お兄さんは?」
「土方 十四郎。」
「土方君は会社帰り?大変だねぇこんな遅くまで・・・・。」」
「まぁな。人使いの荒い上司に毎日こき使われッてからな。」
おかずを口に詰めながら土方が言うと
「ふーん、会社勤務って面倒くせぇーな。俺には無理だな絶対。」
銀時の声と一緒にカチャカチャと食器の音が聞こえて来た。
職業柄なのか銀時は人の話を引きだすのがうまかった、今までさんざん溜めこんできた愚痴を話しても静かに聞いてくれるし、愚痴も尽き世間話に変わると相槌をうち、ときに意見してくる。話している時間が楽しくて体が疲れていて睡眠不足な事も忘れるくらい会話に没頭していた。話は弾んでいたのだがふと銀時が時計を見る。そして
「もうこんな時間だ、土方君は明日も仕事なんだろ?帰らなくても平気なのか?」
そう聞かれて腕の時計を見ると時間は店に入ってから2時間以上過ぎていた。焦った土方は立ち上がり鞄から財布を出しお札を抜き取り、それを銀時に渡し
「やっべぇホントだ、明日朝一営業周りで朝早かったんだ。坂田さんもこんなに長居して悪かったな。メシすっげー旨かった。ありがとう。」
お札を渡すと
「どういたしまして。俺も楽しかったし気にすんな。それにまた話したくなったら来いよ。客が少なくて話せるようなら愚痴も聞いてやるし話し相手にもなってやる。」
お釣りを渡しながら銀時がニッコリ笑う。土方は
「サンキュ、メシすっげー旨かったしここ気に入った、だから絶対食いにくる。じゃあまたな。」
土方が言うと銀時は
「おう、仕事頑張れよ。またなぁ〜。」
片手をあげて見送る銀時に土方も応えて手をあげて店を出て行ったのだった。
こうして土方は一回入っただけでその店と店主銀時を気に入った為ほぼ毎日通い続ける様になる・・・そうして時間を過ごすうちに恋心が芽生え求愛するようになり銀時も土方の必死さにだんだん浸食されていき、付き合うようになったのだった。
そして今日も仕事帰り土方は赤い行燈に誘われるように店の中に入って行く・・・・想い人がいる場所へ・・・。
END
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