愛したい
初めて出会ったのは小2の夏の終わりだった。
夏休みが明けてから2週間ほど経った頃の転校生となれば話題になるのは当たり前で、クラス中がどんな奴なのかと胸を高鳴らせていた。
だから銀時が教室に入ってきた瞬間、シンと静まりかえったのをよく覚えている。
比較的若かった担任はどこか戸惑った様子で、ありきたりに「みんな仲良くしてあげてね」と言って誤魔化すように窓際の一番後ろの席へと追いやった。
その日の授業をまともに受けた奴はいなかっただろう。みんなコソコソと銀時を遠巻きに眺めていた。
そんな視線を受けてなお、我関せずとばかりに立てた腕に顎を乗せて窓の外を眺めていた銀時は今思えば可愛げのない子どもだったのかもしれない。
だけどその時俺は、どうしようもなく惹かれていたのだ。
そのキラキラと輝く銀髪に。
「まだあっちーなぁ。あ!ね、土方。帰りマック行こうぜ、マック。シェイク奢ってよ」
「はぁ!?テメェそれ今月何回目だ!!自分で買え」
「ちぇっ!ケチくせーなぁ」
「うるせぇよ、天パ」
「んだと、コラァ!!」
天パバカにするなとギャアギャア騒ぐ銀時を軽く無視し、大分笑うようになったものだなと思いを巡らせる。
出会った当初は笑うどころか表情を変えることが少なかった。詳しく聞いたわけではないが、彼の育ての親の名字が寺田だということと血の繋がりがないという話から想像に難くない。
だが高校生になった今、当時じゃ考えられないほど怒ったり笑ったりするようになった。うぬぼれかもしれないが、その変化の要因に自分も多少なりとも担えたと思っている。
「そうだ、なあ土方。今度の休み部活ないだろ?どっか行こう!」
「あー、いいな。丁度見たい映画あんだ」
「どうせペドロだろ、いいぜ」
決まりな、と笑った銀時はとても綺麗で。
いつもと変わらぬ帰り道が、夕日を浴びた笑顔のせいで堪らなく胸が熱くなる。
――今はただの親友でしかないけど、いつかもっと一緒にいられるような深い関係になれたらなんて。そんなバカなことを考えていたら、いつの間にか分かれ道に差し掛かっていた。
「じゃあな。また明日、土方」
「おお。またな」
平常心を装って笑い返すと、不意に銀時が何か思いついたようにニヤリと笑い、覗き込むようにして顔を近づけてきた。
夕日みたいな瞳が真っ直ぐ土方を射貫く。
「……楽しみにしてるね、今度のデート」
「え、あ、デーって、はぁ!?」
「アハハ、んじゃねー」
驚いて固まってしまった土方にいたずらっ子のようにクスクス笑った銀時はそのまま小走りで駆けていった。
やや呆然とそれを見送った土方は小さくマジでか、と呟いた。きっと今の土方は夕日に負けないくらい真っ赤だろう。
いつか、なんてもう待てないかもしれない。いてもたってもいられず銀時の姿が見えなくなった方向へ走り出した。
銀時に追い付いたら、一先ず抱き締めてもいいだろうか。
きっと嫌がられはしないと思う。
何故なら先ほどチラリと見えた銀時も、土方と同じくらい真っ赤だったのだから。
End
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