廻る季節
あぁ、またか。
気がつくといつも通りの白く光る空間。
そこに俺はいつも通り意識だけの存在として漂流している。
ほら、もう少しで俺と"銀時"というらしい奴の声が流れ出す―――
―――なぁ
ん?
お前のこと好きだよ
知ってる
そっか
俺さ………もう死んじゃうけど
………
お前のこと好きだよ
……銀っ!俺……
来世だ
え?
来世でまた逢おう。んで一緒に笑って、泣いて、怒って……幸せになろう
銀……銀時………
んでまた一緒に花見して、海に行って、紅葉狩りして、雪見しよう。
………。
約束だからな?
あぁ。破ったら
「「針千本飲ます」」
毎回ここで終わる
なぜだろう?
そんなことを考える内に意識がどんどん覚醒していく―――
外から小鳥のさえずり
耳元で響く目覚まし時計
目を開くと短針が限りなく7に近い6、長身が10を指している。6時50分だ。
………ん?6時50分?
「………。」
未だ眠ったままの頭を必死に回転させる。
「遅刻だぁぁぁ!」
土方の絶叫が部屋にこだました。
土方はこの春から高校に入学するために上京し一人暮らしをしていた。
別に中学の時だって一人で起きれていたのだが今日の入学式への期待と不安から昨夜はあまり良く眠れなかったのだ。
あわててまだ新しい制服を着、身支度を整え引っ越してきたばかりの新居を飛び出す。
駅でおにぎりを買い、食べながら電車に揺られ学校へ滑り込む。
ぎりぎりで校門をくぐり花を胸につける。
在校生に案内され講堂の座席に着く。
ほどなくして入学式が始まる。
俺は周りの見知らぬ高校一年生たちとこれからの高校生活に胸を膨らませ入学式にのぞんだ……はずだったのだが開始から約30分、長すぎる校長の話に船を漕ぎかけていた。
ようやく校長の話が終わり新入生代表の話となった。
俺も頭は悪くないが上の中といったところだ。今年の代表は10年ぶりの特待生らしく俺なんかの及ばない頭脳の持ち主だ。
どんな嫌味な野郎だろうかと思って壇上に目をやり俺は衝撃を受けた。
鈍く淡い光を放つ男がそこにいた
この講堂にいる全員が見とれているのがわかる
それぐらい綺麗で儚い男だった
衝撃を受けたのはそのあとだ。
男から流れ出した声が……いつも夢で聴く"銀時"という男の声と同じだった。
それからあと記憶がなく、気がつくと俺は同級生たちと教室にいた。
ふと横を向くと先ほどの代表が座っていた。
鈍くて淡い光を放つ銀色の男。
恐る恐る声をかけてみた。
「………銀時」
「ん?なんで俺の名前知ってんの?」
ニコリと笑う銀時。でもその笑顔が眩しかった。
「いや、なんでもない」
「ふぅん?」
銀時、お前は忘れてしまったのか……?
入学式でのかったるいスピーチを終え教室へ向かい席に着く。
隣には大好きで大切な土方が座っていた。
声を掛けたいのを我慢してじっと見つめる。
記憶にある土方はもっと刺々しい雰囲気だったが今はどことなく柔らかくなったような気がする。
彼には前世の記憶がないのだろうかと悩み悶々としていると向こうから声をかけてきた。
「………銀時」
突然の名前呼び。
先ほどスピーチの最後に自分も名乗ったからそこで知ったのだろうか?それとも…
期待に胸を膨らませ彼に天邪鬼な返答をする。
「ん?なんで俺の名前知ってんの?」
「いや、なんでもない」
「ふぅん?」
どうやら覚えているようだ。
誤魔化し方が昔と一緒。
だが向こうはこちらが覚えていないと勘違いしてしまったらしい。
これからどうやって彼を手に入れようかと頭を悩ましながら考える。
早くあいつと笑って泣いて怒って幸せになって。
一緒に花見したり海に行ったり紅葉狩りしたり雪見たり。
タイムリミットは三年間。
廻る季節と共に―――
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