アスター
俺の愛の方がお前の愛より深い・・・・
アスター
『ハイハイじゃあね、土方。』
「あ、ちょっと銀時!?」
また、先に電話を切りやがった。
アイツは何時も俺より先に電話を切る。
お互い仕事が忙しく、遠距離のため、めったに会うことが出来ない。
もっと話したかったのに・・・
アイツは何時も早く切りたがる。
電話をかけるのは俺が先。
電話を切るのは銀時が先。
お前は気付いているか?
気持ちを伝えるのが何時も俺が先だって。
時々不安になるんだ。
俺は本当にお前の中に存在しているのか?
きっと俺の愛はお前の想いより、深く重い。
銀時は、こんな俺を重苦しいって思ってるかもしれねぇな。
「あ〜。何かヘコむな。」
考えれば考えるほどドツボに嵌まる。
もう、何も考えたくなくてそのままベッドにダイブした。
次の日、会社でもどうしても考えてしまい、上司の近藤さんに迷惑をかけてしまった。
今日は1日最悪だった。
近藤さんには迷惑をかけちまうし、部下の総悟の尻拭いはあるしで、もう疲れはてていた。
1日の終わりにはやっぱり銀時の声が聞きたくて、電話をかけた。
『何?どうした?』
「いや。ただ声が聞きたかった。」
『あっそ。・・・用がないなら切るよ?』
何だよソレ。あんまりじゃねぇか?そこまで俺と喋りたくねぇのかよ。
「銀時、お前何時も電話を早く切りたがるよな。何でだ?」
銀時への怒りと、仕事での苛々が重なって、銀時を責め立てる。
『・・・・え?』
「そんなに俺と話すのが嫌なのかよ?」
一回開いてしまった口は、もう止められなかった。
『・・・ちがっ。』
「俺はお前から、好きだのなんだのって聞いたことがねぇ。・・・・ホントはどう思ってんだよ?」
『・・・・あ、えと・・・。』
「直ぐに答えられねぇってことは・・・わかった。もういい。俺達は終わりだ。」
『え?ちょっ。ひじ』
銀時が何か言ってるのが聞こえたが、先に電話を切った。
銀時より先に電話を切ったのは、コレが初めてだった。もう、最後でもあるか・・・・
気が付けば別れの言葉を口にしていた。
もう・・・いい。疲れた・・・
俺と別れられて、清々しただろ?なぁ、銀時・・・・
久しぶりに酒を浴びるほど飲んでしまいそのまま眠りについた。
けたたましくなる玄関のチャイムの音で目が覚めた。
「ん・・・うるせぇな。誰だよ。」
時計を見るとまだ夜明け前だった。
無視しようと思ったが、あまりにも五月蝿く、仕方がないから、ドアを開けた。
「誰だよ・・・って銀時!?」
「・・・・土方があまりにもバカだから来た。」
「バカだから来たって・・・・向こうからココまでかなり距離あるだろうが!?」
「土方に直接文句が言いたかったから、車飛ばしてきた。」
キッと俺を睨んできた目は、泣き腫らしている様だった。
「・・・・入るか?」
「・・・・うん。」
銀時を部屋に招き入れ、ソファーに座らせ温かいココアを渡した。
「・・・・・ありがと。」
両手でカップを持って飲む姿は何だか小動物みてぇだな。
「・・・・・何で来た?」
「・・・・土方がバカだから。」
「答えになってねぇよ。ホントの事言え。」
銀時は、カップをテーブルの上に置くと、下を向いたまま話を始めた。
「俺がさ、何で自分から電話をかけないかって。お前、知りたがってたろ?」
「・・・ああ。」
銀時は、深いため息をすると、一拍おいて話し出した。
「・・・もし、俺からかけてさ、土方出なかったら今何してんだろう、誰と居るんだろうって不安になるんだ。」
銀時の膝の上に置いた手を見ると微かに震えている。
「・・・・・。」
俺は何も言えずに、ただ聞くことしか出来ない。
「俺が早く切りたがるのはさ、あまり長く話すとさ、会いたくなるじゃん。会いたくても直ぐに会える距離じゃないだろ?」
「・・・・・。」
「俺が何時も電話を先に切るのはさ、先に切られると、切られた時の音聞いたら淋しいって思うんだ。」
「・・・・・。」
「俺があまり好きとか言わないのって、あまり好きとか言い過ぎると、重くて嫌われるって思ってた。」
銀時の手の甲に綺麗な雫が落ちて白い手を濡らしていった。
「ぎ・・ん・・時・・・。」
「俺、臆病になっててさ、その事で知らず知らず土方を傷付けて。失って。」
泣くな。泣かないでくれ。そんな顔を見たい訳じゃないんだ。
「銀時・・・・。」
だだ、泣きながら銀時がぽつりぽつり話す言葉が、俺の心を段々と満たしていく感じがした。
「でも、土方を好きだから失いたくないって思ったら、体が勝手に動いて、ココまで来た。」
だから、もういいよ。
大丈夫だから。お前の気持ち痛いくらい俺の心に届いたから。
「もう、いい。わかったから。」
泣きながら、話を続ける銀時を引き寄せ抱きしめた。
「土方?」
「すまねぇ。俺ばっかりが好きなんだとばかり思ってた。」
「・・・・意外に俺の愛の方がお前より深いだろ?」
そう言って、俺の腕の中で綺麗に微笑んでいる銀時を堪らなく愛しいと思った。
「・・・・ああ、深いな。だから、別れるってのは取り消させてくれないか?」
ごめん銀時。都合の良いこと言ってんのはわかってる。
だけど、可愛いお前にそんなこと言われて、手放せる訳ねぇだろ?
「俺、かなり傷付いたんですけど・・・罰として、お前、今日会社休め。」
「はぁ?」
「俺、ココまで来ちゃったから仕事間に合わないんだよね。だから、お前も休め。」
銀時は、ニヤリと笑った。
「・・・・何だよ。」
俺は文句を言いながらも、朝になったら会社に電話をかけるんだろうな。
それで、俺の方が愛が深いと言いやがった、寂しがり屋のお前を一日中甘やかして、俺の方が愛が深いってことを教えてやるから。
『アスター』花言葉・・・・・私の愛の方が、あなたの愛より深い
-30-
[back]*[next]
bookmark
BACK
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -