歪曲ラブソング
『真選組』
坂田銀時、土方十四郎からなる大人気男性アイドルデュオ。
歌唱力はそこそこながら、その個性的で対照的なキャラで老若男女の支持を集めている。
『坂田銀時』
明るく社交的でトークがうまく、「銀ちゃん」の愛称で親しまれている。
お年寄りから小さい子供にまでファン層が広く、本人が甘味好きなため、お菓子関係を中心に、多数のCMに出演中。
『土方十四郎』
クールな雰囲気の正統派イケメン。
なにをさせてもそこそここなすが、トークは苦手。
「男が憧れる男」として、車やファッションを中心にこちらもCM出演多数。
「ドラマのな?話が来てんだよ」
「ふぅん。がんばれや」
土方の言葉に、俺は気のない返事を返す。
「ちょっ、なにそのまったく興味ない感じ!もうちょっとなんかあるだろ!言いたいこととか!」
「だからがんばれってば」
「ちげーよ!俺達付き合ってんだよな!?俺の思い込みじゃないよな!?だったらもっとこうさ、ラブシーンの有無の心配とかさ、『トシが女優さんと絡むなんて、俺イヤだ』的な」
「アホか死ね」
「ちょっとぉぉぉ!あんまりだろその反応!」
あぁもぅめんどくせぇな、なんで俺、こんなのとつきあってんだろ。
俺と土方は、所属する芸能事務所の社長の横暴で、突如、半強制的に『真選組』なるユニットを組まされて。
『かわいくてお話上手な銀ちゃん』と『クールな正統派イケメンの土方さん』として、それなりの人気を博している。
しかも恐ろしいことに、今現在、こいつと俺の関係は『メンバー兼恋人』だったりして。
「もー、お前ホントうるさい。ジャンプ読んでる横で喚くなや!で?あんの?」
「なにが」
「だからラブシーン」
「…………ないけどさ。刑事モンだし、主役ってワケでもねぇし。……………『だから心配してんじゃねぇよ、バーカ』とか、かっこよく言いたかったんだよ、俺は!」
………かっこよくは無理だろ、だって土方だし。
つぅかファンの子達は、こいつの何を見てかっこいいと思ってんのか、激しく謎だ。
顔……はまぁ確かにイケメン風かもしれないけど、ちょっと顔がいいってくらいじゃ割に合わないレベルのバカだからね、これ。
まぁ、こいつがもしただかっこいいだけのヤツだったら、俺達、こんな関係にはなってなかっただろうけどな。
「きゃー、土方さん素敵ー、かっこいいー。銀さんうれしー」
「棒読みじゃねぇか!3ヶ月もドラマ中心の生活になるんだしもうちょっとこう、寂しいとか…………。…………やっぱもういいです」
あ、ヘコんだ。
ったくしょーがねぇな。
「ひーじかた」
「………なんだ」
「俺はさぁ、お前が女優と絡もうがちゅーしようが平気だし、しばらく2人での活動が減るってのも、どうってことねぇよ」
「…………てめぇはジャンプと甘味があればいいんだもんな」
あらら、こっちを振り向きもしねーよ、こりゃ完全に腐ってんな。
「だってさぁ」
背後から近づいて、がっ、と顔をムリヤリこっちに向ける。
「痛っ!おまっ……」
ちゅっ
「!?」
お、真っ赤。
うんうん、俺はクールでかっこいい土方さんなんかより、こういうバカわいいお前の方がずっと好きだぜ?
「例えばすっげぇ綺麗な女優さんとお前がちゅーしたとして。その女優さんは、お前とちゅーはできても、こんなカッコワルいマヌケ面は拝めないだろ?お前がそうやって感情丸出しでくるくる表情変えて。ちゅーひとつで赤くなったりする相手は俺だけだ………って。俺、そこは自信持ってていいんだよな?」
「当たり前だ」
「それにさ、俺はこの先ずっと、仕事でもプライベートでもてめぇとやってく覚悟なんだけどお前はそこんとこどうよ?」
「確認されるまでもねぇ。つもりっていうか、それ以外の選択肢なんてねぇよ」
「だろ?だったら3ヶ月くらい微々たるモンじゃん。たった3ヶ月目ぇ離したぐらいでお前が…………」
言葉の途中で、ぐいっ、と肩を抱き寄せられて。
「浮気とかもありえねぇからそこも自信もっとけ」
「だろ?…………ってことで、もうスネんなよ?」
「スネてねーよ」
「…………ここが楽屋だって忘れてるのかな、あの人達」
「忘れてないアルヨ。マネージャーの存在なんて、2人がイチャこくことの障害にはならないってだけの話ネ」
「っていうか銀さん、僕たちにめっちゃ聞いてたよね!?めっちゃ気にしてたよね!?ラブシーンの有無」
「明るく楽しいみんなの銀ちゃんは、トッシーの前でだけではカッコつけてたいネ。乙女なオトコゴコロは複数アルヨ」
アイドルデュオ『真選組』
本日も鋭意活動中。
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