シリーズ | ナノ
 6話




触れるだけのキスをした日以降その様な行為は行っていない
理由は明確、だるまの経験の無さ

何をどうすればいいかも分からず日だけが経っていく

別段今すぐどうこうしたいわけでもこの関係を進めたい訳でもない
焦ってはいないがなんだか自分だけが意識してしまっているようで度し難い

そんな事に悶々としている時に限ったこのメンバー
ありさかとなるせ、世間では大妖怪と認識されているコラボ配信

いつもの様に配信中はケラケラとバカをやって笑っていた
ありさかはあれから何も言って来ない

配信を切って直ぐにあー、うー、と言葉に詰まるだるまを見兼ねてありさかが遂に話題を切り出した

「ナマエちゃんの事?」

エスパーか、と内心突っ込んだと同時に興奮気味に声を荒らげたのはなるせ

「なになに!?だるまの恋バナ!?」

ウッキウキのJKよりJKな声色でだるまに詰め寄るなるせ

「...うん、まぁそう、」

「だるまから言わん限り俺からは何も言わんとこうと思ったけどごめんな、なんか言いたそうやったし」

「俺だけ知らん感じ?おいー教えろやだるまー!」

「なるせはとりあえずうるさい」

「えぇー、相談に乗ってあげようとおもったのにぃ?」

絶対こいつニヤニヤして面白がっとる、会った事もないなるせの顔を想像して腹が立つ

「あれから進展はあったん?」

「あれからって何よ!まず俺に教えろや!?」

ワーキャー騒ぐなるせを他所にありさかはいつもの低い声でデリケートな部分だと理解しつつ問いかけてくる

「あったっちゃあったけど...ないっちゃない...」

「とりあえずだるまの中でのナマエちゃんの位置は決まったわけね」

「ねー!混ぜてよー!」

なるせがうるさいのでとりあえずナマエの存在を吸血鬼という事以外大雑把に話した
話せば反応は思ったより大人で静かに聞く側に徹してくれていた
なんだかんだいっても年上なのだと思い知らされる

「...んで、思わず...ちゅ、チューした」

「わぉ」

「うぉ」

似たような反応を被せる2人

「それでナマエちゃん?の反応は?」

「それが何も無くてさ...」

「えー!まじかよ!」

なるせの反応は正しい
ありさかは吸血鬼でありこの世界の事をよく知らない子だと知っているからそう来たか、とでも言いたげだ

「それでそれで?だるまはもっと進展したいんやんな?」

「まぁ...そう」

「ナマエちゃんやしなぁー、俺元々専門外やのに更に専門外」

「そっか、ありさかは会ったことあるんか」

「うん、1回だけね」

「だるまはとりあえずどうしたいとかあるん?」

「...俺の事異性として意識してくれてるかなぁ...と、とか」

いつもの立ち位置とまるで入れ替わっていてなんだか悔しい
いつもはだるまが大体お調子者、ありさかが突っ込みつつ話を広げる、なるせはうるさい、位だったのに自分からこんな話をする日が来るなんて思ってもいなくて声量がどんどん小さくなるのを感じる

「じゃあさじゃあさ、だるまから迫ってみるってのどうよ?」

「はぁ?」

「チューとかじゃなくてさ、もっと男を思わせる?みたいな!」

なるせはいつも適当を言いつつも確信をつく
自分が誰かにゲームならともかく恋の相談なんて馬鹿げた事する日が来るなんて思ってもみないところでなるせの良さが発揮される

「具体的には?」

「そりゃ人それぞれだしこれ!っての思いつかんけどそれこそ本能?ってやつに任せれば?」

「いやそれはお前...」

「違うよ!?ありさか!ちゃんと度合いは間引いてな!?」

難しいようでちゃんとした回答を持ってくるなるせにきっとだるまと同じような事を一瞬考えてしまったありさか

とりあえず一旦保留で、と今日の通話は切りリビングへ戻るとナマエがリビングのテレビでゲーム機をいじっている

「なんや?やりたいんか?」

「うむ!しかしやり方が分からぬのだ...だるまはいつも簡単そうにやる」

「まぁ繋げるぐらいならなー、ゲームこれでええ?」

「あのだるまがやってる戦うやつがいい!」

「あーこれ?」

「それだ!」

テレビとゲーム機を繋いでこれであろうよくやるソフトを立ち上げる
コントローラーで「これが攻撃、これがジャンプ」なんて大体の事を教えると飲み込みがいいのかNPC相手に2戦目で勝利した

「これすごく楽しい!だるまがいつも楽しそうにやっている理由がわかったぞ!」

「楽しいかー!せやろ?」

こんな時間が大好きでこれが大切、ってやつかなんて身に染みる
そんな時になるせの言葉が過ぎる「男を思わせる」

「じゃー俺と1回勝負しやん?俺が負けたら今日血飲んでいいよ」

「本当か!?する!!」

食いついた、勿論勝ち負けは見えているしこんな勝負持ち出すなんて男らしく無いとは分かっている
だがだるまにとっての勝負はこのゲームに勝ってからだ

「むぅー!1度も勝てない!」

「ハハーッ!今日はお預けやな?」

「それが狙いか!?酷いぞだるまぁ!」

「...まぁ可愛くオネダリ出来たらあげんでもない。」

「オネダリ?」

コントローラーをテーブルの上に置いてナマエの方へ体を見やる

「俺の好きなとこ、言って」

自分で言っておいて恥ずかしくなってきた
ナマエの目を上手く見れず視線を逸らす

「それがオネダリになるのか?簡単な事だな!だるまは優しい!それに血が上手い、物を教えるのも上手だぞ!それにゲームやいんたーねっとに凄く詳しいしゲームをやっている時の手が好きだ!私の頭を撫でてくれる手も好きだし暖かい!それに、「ストーーップ!!!」」

これはダメだ恥ずかしいと思わずナマエをソファに押し倒す形で手で口を塞いだ

「分かったから、飲んでいいから...俺の負け」

そう小さく呟くとナマエは口を覆っている手の中指と人差し指の間に舌を這わせた

その光景に背筋がゾクリとなった
こいつは無意識に俺を煽るのが得意だ

なるせの言葉は今は思い出していないが本能がだるまという男を煽る
目の前に好きな女の子が無防備にも大人しく押し倒され手を舐められこれで煽っている認識はしていないのだからタチが悪い

「ナマエが悪いからな」

手で口を覆ったままナマエの首元にいつもやられているように舌を這わす
ピクリとナマエの体が揺れた気がした
勿論そんな性癖は無いがナマエの首筋が、妙に甘く感じた
そのまま下へ下へと舌を下げていく
鎖骨の窪みを舐めたあたりで肩を叩かれた

ナマエの顔を見つめると覆われている手の隙間からフーッフーッと息を荒らし林檎のように顔が赤いその表情が、空気感がだるまの中の支配欲にも似た興奮感を高めていく
ゆっくり手を離す

「...これは、なんだか、変なのだ」

「変って何が?」

「わ、分からぬ…」

「じゃあこれは?」

いつかのようにまた唇を合わせるが、以前と違うキス
角度を変えて唇を啄んでやると息をしようとナマエは簡単に口を開く
その隙に舌を入れる、やっぱり甘い
本能で噛んではダメだと察してくれたのかナマエは噛まずにだるまを受け入れる
小さな舌が逃げては追いかけて絡めとる
どちらのものか分からない唾液がナマエの頬を伝いこの行為が気持ちよくて止めれなくなった頃にさっきより強く肩を押された

「ハァ、ハァ...苦しい...のだ、」

茹でダコの様になったナマエを見てやり過ぎたか、と反省すると共にナマエの目に映る自分自身も同じ様に顔が赤い事に気づいてしまう

「これも、変?」

「これは...気持ちいいと...言うのだと思う」

愛だの恋だののこの熱い片鱗を少しでも分けてやる事に成功しただるまは嬉しくなってもう一度口づけを落とした





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