◎ 4話
初めて会ったナマエは今と打って変わって全ての物を観察もしくは警戒と呼ぶべきか、ピリついていた
路地で寝ていたので声をかけると「お前、いい匂いがする」と逆ナンか?と疑う発言をされるも何度突き放しても結局家の前まで来てしまう始末
可愛らしいまん丸の瞳に見つめられると嫌とはいえず家にあげてしまった
するとどうだ、ピリついていた空気が無くなったと同時に「これはなんだ!こっちはなんだ!」と色んなものに興味を示す
「お前、どっからきたん?海外??」
「遠いところだ、場所は分からぬ」
「んあー、迷子か?警察いく?」
「けいさつ、とは何だ?私はどこにも行かぬぞ、ここが気に入った」
「いやいやいや、それはまずいって」
答えの見えない押し問答を繰り返した結果分かったことは未だ名前のみ
「ところで腹が減ったのだ、食事をとっても良いか?」
「あぁ?んまぁ別にいいけどこんな時間やしなんか作るしか...」
時間は深夜も良いところ配達も通っていないだろうし先程コンビニに出たばかりだ、何か作るかと思い立ってソファから立ち上がろうとした所ナマエがだるまを押し倒して馬乗りになる
「え?は?」
頭が真っ白になった
色気もへったくれもなく突然小さな少女に上に乗られている事実を認識するのに数秒かかる
「ずっとだるまのいい匂いが漂っていてな、我慢がならぬのだ」
理解も抵抗も追いつかぬままだるまは来ていたTシャツの首元をずるりと引っ張り脱がされた
はだけた首元にナマエは口を寄せだるまの首筋をペロリと舐め上げる
心臓が高鳴り顔が熱い
「ちょ、お前なにしてんねん!あかんって!」
これからされる事を軽く想像しただけでも目眩がする
こんな小さな少女に俺は何を思っている?
いけない、いけない、と頭が信号をあげる
「先程言質は取った。嫌とは言わせぬ」
かぷり、
首筋から皮膚を貫く音がした
これはなんだ?何をされてる?何が始まった?
疑問符しか湧かない頭が体を固まらせた
その隙にナマエは首筋から歯を伝い血を飲み込む
痛みは無くむしろ、これは、
__気持ちいい
頭がクラクラしてくる
首筋から熱いものが身体中に伝染する
ナマエの柔らかい唇が今自分の首筋と触れ合っている
熱が顔にも伝染する
呼吸が荒くなる、息をするのはこんなにも難しかったか?
どれぐらい経ったかナマエが首筋から顔を離す
向き合った顔はとても近く大きく妖艶を含んだ目とぷるんとした唇が目に入る
この唇に触れたい
この時のだるまに理性は無かった
「とても美味かったぞ」
口元の血をペロリと舐め上げるナマエの一言がだるまを現実に引き戻した
「は?え?いま、え?」
「人間には珍しいか?私は所謂、」
__吸血鬼だ。
どうやらとんでもない物を拾ってしまったらしい
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