「おーい!こっちだぞぉ総悟ーっ」


七色のネオンが至る所に煌めく虹色通り、馴染みのキャバクラから千鳥足で出て来たムサい野郎共を前方に確認しオレは店の側へ愛車を横付けする…豪快に手を振るストーカーゴリラ、いや近藤さんと松平のとっつぁん、そして2人の肩をかりて辛うじて立つ泥酔状態のどっかの副長だ。窓を開けた途端、喧しい声が車内に流れるラジオに負けねぇぐらいの勢いで響き渡った。


「ったく、情けねぇ!ちょっとドンペリ呷ったぐらいでこのザマたぁ家族を支える大黒柱にゃなれねぇぞ!!」

「ははは、とっつぁんは手厳しいなぁ〜!って訳だ、総悟…悪ぃがトシを頼む。」

「へい。責任持ってまよい橋の袂にでも置いて帰りやす。で、明日から副長はオレ…」

「駄目だから!頼むからちゃんと部屋まで送り届けてよ!!」

「らーじゃ。」


顔を真っ青にして叫ぶ近藤さんに敬礼ポーズをキメれば、そろそろ次の店へハシゴしたいとっつぁんが勝手に1人で歩き出す。申し訳なさそうに土方コノヤローをオレの車の助手席へ預けた近藤さんは両手で『すまん』のポーズを作り苦笑いを浮かべたまま虹色通りの奥へと消えて行った。


「家族を支える大黒柱ねぇ・・・ま、この人に限って結婚はねぇぜ。とっつぁん」


助手席を寝やすい角度に調整し、アルコールの匂いを漂わせる土方さんの頬を指の背で撫でる。すやすや安らかな寝息を立てる姿が何とも小憎らしい。

こいつが酒に負けて戦線離脱なんてするから真夜中に携帯鳴らされまくって起こされたのだ。副長の次に偉いんだから連帯責任だと。

どうせなら二次会から誘ってくれてもよかったのに……未成年の壁はまだまだ厚い。


「さァて、どうすっかな…酔い醒ましデートってのもオツだねィ」


アクセルを踏み込み、虹色通りから公道へと抜ける。一般道路に使われてる天人のお偉い学者さんが発明したシルバーライトはこの星じゃ採掘出来ない原石を研磨したモンらしい。ラジオから垂れ流される面白い情報を鼻歌混じりに聴きながら今頃とっつぁんと飲み比べになってるだろう気の毒なゴリ、近藤さんを思った。

なまじ酒に強ぇから酔いつぶれた部下をちゃんと最後まで面倒みたり、酒豪のとっつぁんにとことん付き合ったり……昔からあったかい人だ、近藤さんは。

大抵の公道にあるドライバー専用の休息スペース(道路の窪みみたいな所)に車を停めて、携帯にジミーの名前を表示しボタンを押す。とりあえず3回鳴らして出なかったら明日バズーカ発射の刑。


―プルルル…プル、


『はい。山崎です』

「もう出やがった」

『かけたの隊長でしょーが!何か事件ですか?』

「近藤さん、多分べろんべろんに酔って戻るぜぃ…布団よろしく」

『あれ?副長は?』


流石はジミー、鋭い上に野暮ってぇ。眇めた目の先でぐっすり無邪気に眠ってらァ。


「土方さんはオレとまったり朝帰り、もし昼過ぎても戻らなかったらテキトーに言っとけ」

『ははは、2人して非番ですもんね。ごゆっくりどうぞ』


電話が切れる。ったく認めたくねぇが縁の下の力持ちってのは山崎を指す言葉だとつくづく思う。情報が仕事柄隣り合わせの奴だからこそオレと土方さんの関係をあっさり突き止め、周囲に広めたりする事もなかった。

口では『アンタ等の報復が恐いんです』なんて笑いやがったが、きっと善意だ。あれから何となく仲良くなった気がする…土方さんがジミーにあんぱん奢る回数も間違いなく増えた。


「さぁて、ご馳走の時間だねィ」


ぺろっと渇いた唇を舐めてシートベルトを外す。爆睡中の土方さんへ覆い被さり窮屈そうに見えるスカーフを取り払ってやった。剥き出しの首に顔を埋めれば温くてやっぱり酒臭ぇ。

恋人が泥酔状態で眠りこけて、しかも隣りに座ってるとか……健全な野郎なら普通に襲うだろィ。無防備にも程があらァ…新車だから絶対汚したくない<土方頂きますって式が成立する色恋なんて可笑しい。

惚れた弱みってか。悪かァねぇ……あんたもそう思うでしょ?


「土方さん」

「……ぅ…あ?」

「目、覚めやした?」


脱がせようと握った布地とあからさまな体勢を見るなり鋭い眼が大きく揺れた。


「ナニしとんじゃコラァアアアアア!!」

「何って、オレの女と寝て何が悪い。」

「真顔で開き直ってんじゃねぇ!どけっ、女じゃなくて野郎だ俺は!」


しっかり訂正しジタバタ暴れる土方さんを押さえつけようと腕を掴めば急に動きが止まる。

きょろきょろ車内を不思議そうに見回すなり少し考え込んで呟いた。


「…俺、つぶれた?」

「へい。それはもう1人じゃ立ってられねぇぐらいには。あ、気にしなくていいですぜ。ぐっすり安眠中だった所をどっかの副長がダウンした所為で起こされた事ぐらいでオレは怒りやせん」

「ゔっ!」

「手間賃はどっかの副長のヤニくせぇ身体がいいなんて、ちっとも思ってませんから。」

「うぅっ!!」


とびっきりの笑顔を向ければ己のしでかした罪を苛み、オレの欲求に懺悔と言う退路を塞がれ理性との板挟み状態だ。

あぁ愉快、これだから土方さんをからかうのは止められねぇ。


「…車、汚したくねぇって言ったろ。」

「あんたとドライブ行く為に買った車でさァ、そのぐらい許容範囲ってコトで。」

「くそったれ!ったく高ぇ手間賃だ…来いよ」

「へへ、その台詞待ってました。」


伸ばされた腕が首に絡んだ瞬間、オレは本能を開放し投げ出された肢体を貪った。



□終□


―――――――

サラバ様からの相互記念小説です!
って、うああああああ……こんな素敵な小説貰っちゃっていいんですかね!?
しかも私の日記に呟いてあったあの言葉を現実にしてくれるなんて……。
すごく嬉しいです!

サラバ様、本当にありがとございます><!








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